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2017.09.15

金澤寿和(Light Mellow)の観点から見たジャパニーズ・フュージョンと、和モノAORのギター名演|ギター・マガジン2017年10月号より

Interview by 河原賢一郎

近年のシティポップ/和モノAORブームの大きな指針となったのが、伝説的ディスク・ガイド『Light Mellow和モノ』シリーズである。ギター・マガジン2017年10月号では、その監修者であり、同シリーズのコンピCDや名盤リイシューの企画なども手がける音楽ライターの金澤寿和に、今回のテーマ="今聴いても新鮮"という観点から、ギターがカッコいい作品を紹介してもらった。

イベントで盛り上がるのは高中さん。
お客さんが" お〜!"ってなりますから。

─特集の裏テーマとして、今、シティポップを新鮮な目線で聴いている世代にも響くフュージョン/AORインストがあるんじゃないかという狙いがあるんです。だからなるべく歴史的な体系とは無関係に、"今聴いても良いサウンドかどうか"を基準にした内容を目指したんですが、それってまさに金澤さんがLight Mellowでやっていたスタンスと同じだなと思っていて。それで今回、ご登場いただいた次第でございます。


 確かにAORやシティポップは歌モノが基本だと思いますけど、僕らの世代はスタジオ・ミュージシャンのような裏方を追っかけてきた経緯もあるので、フュージョンもAORもシティポップもソウル系も、みんな一緒くたに聴いていたんですよ。だからインストでも"ボーカルのない歌モノ"みたいな感じで聴けるものだったら全然アリだと思うし、高中さんなんかは完全に歌モノ・ポップスと同列で聴いてましたからね。


─そういう感覚は世代に関係なく共通だと思うんです。さて、今回はギタリストの作品を中心に選んでいただきましたが、何かポイントは?


 例えばギター・ソロで自分の魅力を発揮する人もいれば、" 実はカッティングがいいんだよね"という人、あるいはインスト・リーダー作も出しているけど" 歌モノのバッキングが素晴らしい"っていう人もいて、そのへんは網羅したいなと思って選びました。こういった特集だと、普段のギタマガで取り上げられないような人をフィーチャーできる機会でもありますしね。まず、角松敏生の『SEA IS A LADY』(1987年/画像内1)は言わずもがな。あとは松木恒秀さんだったら山下達郎作品の初期のプレイがおもしろいなとか(笑)。典型的なのが『It's A Poppin' Time』(1978年/2)ですね。基本的になんでもできる人ですけど、ここではエリック・ゲイル風だったりするし、達郎さんのギターの先生でもありますしね。

─鈴木茂さんのソロ・アルバムも選んでいただきましたね。


 『Band Wagon』(1975年/3)は言うまでもないですよね。スライドもすごく色っぽいし。茂さん自身も、今またこのへんのサウンドに戻ってきている気がします。

─ 20代のギタリストも茂さんに影響を受けている人が多くて、時代が一周した感覚はあります。


 まさにそうなんですよ。最近では、僕らが聴いていた70〜80年代のスタジオ・ミュージシャンが好きっていう若いプレイヤーも出てきましたしね。そういう流れがあったところにまずceroが出てきて、さらにSuchmosが大爆発して。洋楽で言えば、ブルーノ・マーズやマーク・ロンソン、あるいはタキシードのような80'sブギー的なものが流行っていつつ、70~80年代の和モノAORやシティポップに反応する若い子が増えてきたなという感じがあります。和モノのDJイベントをやっても21~22歳の若い世代がいたり、この間、湘南でやったイベントなんか20歳の女の子のDJがいましたからね。しかも僕ですら、見たことはあるけど持ってないような、"どっから見つけてくるの?"っていうレコードを持ってきたりして(笑)。親がユーミンや達郎さん、角松が好きっていう世代なんですよね。

─ちなみにDJイベントでは、どんなものが盛り上がるんですか?


 達郎さん周辺は絶対。ギターなら茂さんの『Band Wagon』もやっぱりウケます。大村憲司さんはメロウでちょっとゆるい感じなので、クールダウンさせたい時にかけたりしますよ。あとは、カシオペアの「ASAYAKE」や高中正義さんの「SWEET AGNES」はいつも反応がありますね。


─やはり「ASAYAKE」は鉄板ですか(笑)。

 鉄板ですね。今回は選んでないですけど、川崎燎さんの「TRINKETS & THINGS」(1979年/4『Mirror of My Mind 』収録)とかね。あれはギターと言うよりも、スキャットもの、ブラジリアン・グルーヴものとしての人気だと思いますけど。でも、やっぱり一番盛り上がるのは高中さんかな。お客さん
が"お〜!" って感じになりますから。


─なるほど〜。今回は高中さんのアルバムもいくつか選んでいただきましたね。


 高中さんは、やっぱり最初の4枚ですね(『SEYCHELLES』、『TAKANAKA』、『AN INSATIABLE HIGH』、『BRASILIAN SKIES』)。特に2ndの『TAKANAKA』(1977年/5)は、40年たった今でも夏になると何回か聴きます。アレンジやメロディの組み立て方が抜群に良いのと、70年代後半の遊び心が凝縮されていて、もう非の打ちどころがないですよ。メンバーも松岡直也(p)さんが参加していたり、いわゆるサディスティックス系、ティン・パン・アレー系のミュージシャンだけで固めてないから、そういう人選のおもしろさもありますしね。決してテクニカル推しのギタリストじゃないけど、曲作りがうまくて、本当にこの頃の高中さんはブッ飛んでいたなと思います。最初の4枚はちょっと別格だなと。

(続きは、ギター・マガジン2017年10月号にて!)


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品種雑誌
仕様A4変形判 / 254ページ / CD付き
発売日2017.09.13