• トップ
  • PICK UP
  • 名匠から学ぶ正統エンジニアリング:GOH HOTODA|サウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号より

PICK UP

  • サウンド&レコーディング・マガジン

2017.11.06

名匠から学ぶ正統エンジニアリング:GOH HOTODA|サウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号より

Text by iori matsumoto

東京出身、1960年生まれのGOH HOTODA氏は、シカゴでキャリアをスタートし、1990年にマドンナ『ヴォーグ』のミックスを担当。ハウス・ミュージックが市民権を獲得する基盤を作った。その後、ジャネット・ジャクソン、デヴィッド・サンボーン、チャカ・カーンの作品でグラミーを受賞。日本のアーティストでは坂本龍一や宇多田ヒカルなどとも仕事をしてきた。2005年に妻であるNOKKOとともに帰国後、2007年にはプライベート・スタジオを自宅に構築。最近はスタジオをマスタリングまで可能な形に再構成しつつ、NOKKOが在籍するREBECCAや大沢伸一が再始動したMONDO GROSSOのほか、テイ・トウワ、松任谷由実などの作品に参加している。常に世界を見てきたHOTODA氏の目に、今は何が見えているのか。

 "理想とするサウンドは?"との問いに、HOTODA氏の回答は実に明快だった。


 「新しくする、ということですね。古いものにこだわらない。最近はマスタリングもするんですが、基準にしているのは今一番新しい音楽です。思えば、昔もそうだったんですよ。マーカス・ミラー(b)と仕事をしたときにも、彼のジャンルはジャズ/フュージョンだけど、僕は当時流行していたTLCのようなイメージでやってみたらどうだろうと思っていた。つまり、そのとき旬なサウンドにこだわっているということは確かですね。僕にとっては、1970年代のサウンドがいいとか1980年代が基本だということはないんです。新しい音に敏感であるということは、僕の中では大事。シンプルに言えばそれだけかもしれない」

 HOTODA氏は、Apple Musicなどストリーミングで新曲をチェックすることが多いという。


 「"音が立っている"と感じられる楽曲をチェックしたりしてます。例えば、NOKKOのREBECCAと一緒に制作していたんだけど、もともと30年前のバンドの再結成だから、それをどう今の音にするのか考えますね。今のリスナーは、エッジの立ったサウンドを聴いて耳が良くなっている。特定のサウンドにとらわれていない分だけ、エンジニアよりもリスナーの方が耳が良いかもしれないですよ。それに情報もたくさんある。ストリーミングだったら、ちょっとでも面白くなかったらどんどん次の曲に飛ばされてしまう。そういうふるいにかけられている中で、残るものをいかに作るかということは、考えますよね。今まではジャンルとかチャートとか、そういう分かりやすいものがあったけれど。今は個々人がそういうふるいをかけている。一方で、ライブ会場でしか買えないCDは、そういうふるいの上にも乗っていないと言えますね」


 古いものには全くこだわらない。HOTODA氏らしい態度だ。実は、サウンド・プロダクションの面でも、古いものにこだわりたくない理由があるという。

 「過去の機材にこだわり過ぎても、音が遅くなっていって、後ノリの音楽になっていく。ミックスしていても全部が遅くなっていくというか。特にApple Musicなどで古い音楽と新しい曲を聴くと容易に比較できてしまう。どんな音源もAPPLEのエンコーダー/デコーダーを通るだけ。どんなに元の音が良くても、内容、スピード感が今の時代に合っていなかったら、"素晴らしいレトロ"になるだけ。美術館に所蔵されている作品のように良い音がしても、全然大衆的ではないんですよ。僕としてはレトロなものをやるつもりはないですね」


 自身でマスタリングまで手掛けるようになったのも、こうした時代の流れと関係している。以前はプライベート・スタジオにAVID D-Controlを設置していたが、今はマスタリング系アウトボードを埋め込んだデスクへと入れ替わっている。

 「ぜいたくなマスタリング・スタジオで、16ビット/44.1kHzのCDに向かって最高の音に仕上げるというのも、今はそうじゃないと思うんです。CDプレーヤーで聴く機会も減ってきたから。CDはクリップさえしなければ、インターサンプル・エラーも関係ありませんが、ストリーミングだとそれで音が割れてしまう。CDマスタリングは音がでかくて広ければOKというカルチャーだったけれど、そのまま配信用にエンコードすると音が割れてしまうんです。音の要素が増えていくほど圧縮しきれずグチャグチャしてくる......そういうマスターは結構多いですよ。流行と同時に、現在のフォーマットにも合わせる......人の曲を預かっている以上、ちゃんとやらないといけないと思いますね

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号にて!)


サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号

品種雑誌
仕様B5変形判 / 276ページ
発売日2017.10.25