図書の家選書12
「さあ ゆかりさんもいっしょに おどってごらん」
「でも……あたしまだ からだが………」
「それならしんぱいいらない 一寸まって………」
───紫の妖精
花村えい子を特集した今巻は初期短編集と題して、その長いキャリアのごく最初期の4作をセレクト。表題作「紫の妖精」は1959年に金竜出版社から発行された貸本『虹 別冊』に発表された、花村の記念すべきデビュー作。他、「雪と少女と人形」「幸せのオルゴール」「今日も風が吹く」の3作を収録。花村えい子の多彩な世界が堪能できるラインナップです!
※本書は発表当時の書籍を底本として復刻しています。ノンブル表記を原本そのままにしている作品があります。
色についても現状の書籍の状態をほとんどそのままにしており、ページの傷みや破れ、シミなどを含んでいる場合があります。
本書には、現在の観点から見ると差別用語と取られかねない表現が含まれていますが、原文の歴史性を考慮してそのままとしました。
【目次】
紫の妖精(1959年)
雪と少女と人形(1960年)
幸せのオルゴール(1959年)
今日も風が吹く(1960年)
作者のことば/花村えい子
解説 貸本マンガとは/想田四
作品解説/図書の家
プロフィール
「図書の家選書」発刊にあたって
目次
「紫の妖精」扉
病気で寝たきりの少女ゆかりの元に不思議な美少女「紫」が現れます。紫に誘われ、ゆかりは夢のような世界に遊びに行きます。(「紫の妖精」より)
花村えい子
マンガ家。1929年11月9日埼玉県生まれ。
女子美術大学絵画科中退。結婚後に大阪へ転居、階下の貸本屋店主に勧められて描いた処女作「紫の妖精」が1959年、金竜出版社の貸本短編誌『虹 別冊』に掲載されてマンガ家デビューする。このころ楳図かずおや谷悠紀子らと知り合う。東京へ戻り64年『なかよし』11月号発表の「白い花につづく道」で雑誌デビュー。以後、多数の連載を持つ人気作家となる。代表作に『週刊マーガレット』連載の「霧のなかの少女」(75年にテレビドラマ化)、『女性セブン』連載のレディースコミック「不機嫌家族」「花影の女(ひと)」など多数。日本のミステリー小説や「源氏物語」などの古典文芸作品のマンガ化も数多く手がけている。欧州でも人気を得て、2007年にはフランス国民美術協会(SNBA)サロン展覧会にて特別賞を受賞し正会員となる。日本漫画家協会名誉会員。水野英子発起の「少女マンガを語る会」メンバー。2020年、91歳で逝去。公式サイトhttps://eiko-hanamura.com
少女マンガに関する書籍の企画編集制作、デザイン、映像制作などを行っている。初出調査・作家検証は自己所有資料を含め実資料にあたることを信条としている。
立東舎では飛鳥幸子著『決定版!怪盗こうもり男爵』(2019)の他に『文月今日子の世界』(2023)、アンソロジー『マンガ化!世界文学 耽美とヒロイン』(山田英生と共同編集/2022)、『ザ・少女マンガ!忠津陽子の世界』(2021)、『かわいい!少女マンガ・ファッションブック』(倉持佳代子と共同編集/2020)、谷ゆき子著『バレエ星』他2作(2017-18)などを刊行。ほかに河出書房新社では少女マンガ家の仕事をまとめた『総特集シリーズ』(2015-24まで8冊)などを刊行している。