DISC 2
6Helter Skelter
ヘルター・スケルター
1968年7月18日、9月9日、10日、アビイ・ロード第2スタジオで録音
ポールがザ・フーを上回るハードでノイジーなロックを書いた
ポールは常に自分のイメージにあてはまらない曲を作ろうとしていた。ザ・フーのピート・タウンゼントのインタビュー記事に、ニュー・シングルの「アイ・キャン・シー・フォー・マイルズ」はザ・フーの作品の中でも一番騒々しくて、ダーティでまったく妥協のない曲だと書かれていたのを読んだポールは、ビートルズにおいて真のロックはジョンが担当し、自分はソフトなバラード担当のように見られているというイメージを払拭するために世界中で一番ハードでヘヴィなロックを書こうとした。「Helter Skelter」とは、イギリスではよく見かけられる塔の周りをらせん状に滑り降りる滑り台のことである。
詞を読んでみると、かなり性的な意味を含めているように思える。ポールは「ヘルター・スケルター」をてっぺんから真っ逆さまに一番下まで落ちていくことのシンボルとして使った。「ローマ帝国みたいな、没落、終焉、衰退の意味で使った。可愛いタイトルに思えたかもしれないけど、いろんな意味で不吉な含みを持たせたタイトルだった。レコーディングでもできる限りうるさくてすさまじい音にしてもらった」。
1968年7月18日の録音分はボツ。9月9日、10日にレコーディング。
イントロは1弦の開放音と2弦を同時に16分音符で弾くという形で、1弦は開放にしたまま2 弦は12フレット目の「B」を一発だけ弾き、3フレット目の「D」を1 小節弾いて歌に入り、そのままから3フレット目の「D」、2フレット目の「C#」、1フレット目の「C」と下げていき、コード「G → E7」でメロディに入る。「♪ Helter Skelter」の歌詞の後に入るギターとベースのユニゾンのフレーズもハードに決まっている。間奏やエンディングもポールのギターだろう。
コーラスもディストーションのギターもジョージが弾いているスライド・ギターもすべて、これでもか!という雰囲気である。充分伝わってきていますよ、という感じである。
フェイド・アウトして終わったかと思うとまたフェイド・インしてくる。
レコーディングの記録にはオーバー・ダビングでジョンがベースを弾き、ひどいサックスも吹いたと書いてあるので、フェンダー・ベースVI だろう。ダウン・ピッキングだけで叩きつけるように弾かれている。これはジョンがギターを弾くときと同じ、強いピッキングの印象だ。ギターと同じ弾き方で弾けるので、オクターブ上の音を使ったりと、ジョンなりに遊びのあるプレイをしている。同時にマル・エバンズもトランペットを吹いた。サックスとトランペットはエンディングのフェイド・アウトからフェイド・インの部分で聴くことができる。
リンゴのドラムもかなりハードなプレイで、叩き終わって「I’ve got blisters on my fingers!(手に豆ができちゃった)」と言っている。
この曲も「ピッギーズ」と同様、チャールズ・マンソンが歌詞を曲解し、「ヘルター・スケルター」は全世界の3 分の1 にあたる人口を殺害することを意味している、と裁判で答えている。
筆者の印象では、確かに演奏はかなりヘヴィなサウンドになっているのだが、ビートルズの抜群のハーモニーが美しすぎるために、ザ・フーの持っている荒々しさはなく、後から感じたのだが、むしろコーラスの美しいクイーンに近いイメージである。
<使用楽器>
ジョン:フェンダー・ベースVI、サックス
ポール:エピフォン・カジノ、ピアノ
ジョージ:フェンダー・ストラトキャスター
リンゴ:ドラムス、マラカス