ギタリスト:牛尾健太(おとぎ話) 撮影:西槇太一
テキスト:尾藤雅哉
2015年に本誌創刊35周年を記念して誕生したテレキャスター“Manhattan”、日本を代表するロック・バンドRADWIMPSの野田洋次郎とともに2017年に作り上げたテレマスター“ACE”───それらに続くスペシャル・コラボ・ギター“Seattle”(シアトル)が登場!
このギターのルックスをひと目見て脳裏に浮かぶのは、ストラトキャスターを手に数多くの名演を奏でた不世出の天才レフティ・ギタリストだろう。その姿にあこがれたプレイヤーは数知れず……そこで今回は、左利き用のボディを使用しながら“右利き用”に細部をチューンナップした、使えるリバース・ボディ仕様のストラトキャスターにこだわってみた。
まずはコントロール部に注目してほしい。演奏性を考慮し、右腕に当たってしまうトーン・ツマミを取りはずした、マスター・ボリューム&マスター・トーンというシンプルな仕様になっている。加えてピックアップやアームの位置も右利き用と同じレイアウトに変更。従来のストラトキャスターに近い音色や弾き心地を実現しているのも、こだわりのポイントだ。
またサウンドを決定づける心臓部のピックアップには、素晴らしいトーンを生み出すカスタムショップ製Fat50sを搭載。さらにボリューム&トーンのサーキットはUSA製と、ワンランク上のサウンドを創出するためのこだわりのパーツを選定した。指板には今や貴重材となったローズウッドを採用。ラージヘッドや精悍なブラック・ボディと相まって、見た目にも大きな存在感を放つ1本に仕上がっている。
さて、ここまで本モデルの魅力を書き連ねたが、抱えてみると従来のストラトキャスターに比べて少々弾きづらいのは否めない。そこはギター・マガジンとして正直に伝えなければならないポイントだろう。今から65年も前に誕生したストラトというデザインはすでに完成の域にあり、時を越えた現代もなおエレクトリック・ギターのスタンダード・モデルとして愛され続けている理由を本器を抱えてみたことでより一層強く実感した。
しかし! エレキ・ギターが持っている唯一無二の魅力のひとつは、“カッコ良さ”にあると言えるだろう。多く人々に“持ちたい!”、“弾きたい!”と思わせるルックスは、音色以上に重要な意味を持っているのではないだろうか?
そして想像してほしい……世の中で一番人気のあるスタンダード・モデル=ストラトキャスターを手にするということは、同じギターを手にしているライバルがすぐ横にいるということなのだ。しかも、素晴らしいストラト使いのギタリストは、過去から現代にかけて星の数ほど存在している……そんな状況だからこそ、ストラトキャスターの素晴らしい音色はそのままに、アイコニックなルックス、ハイグレードな仕様を持つ本モデルは、自らのアイデンティティを表現する相棒として演奏者をより魅力的に輝かせてくれるはずだ。そして新たなスタイルの扉を開いてくれることだろう。
¥136,080
※デジマート・セレクトショップ販売価格
●ボディ:アルダー ●ネック:メイプル ●指板:ローズウッド ●ピックアップ:Custom Shop Pickup Fat 50s×3 ●フレット:21 ●コントロール:マスター・ボリューム、マスター・トーン、5ウェイ・ピックアップ・セレクター ●ブリッジ:シンクロナイズド・トレモロ ●カラー:ブラック ●付属:ソフトケース(ギグバッグ) ●日本製
▲ピックアップには低音のレスポンスが強化され、1950年代のシングルコイル・サウンドを響かせるカスタムショップ製Fat50sを採用。1ランク上の豊潤なサウンドを響かせてくれるだろう。加えて従来の右利き用と同じピックアップ・レイアウト&アーム位置なのもポイントだ。
▲演奏性を考え、右腕に当たるトーン・ツマミを排除したマスター・ボリューム&トーンという特別仕様。ポットの配線材はUS製を使用。サウンド面に関して細部にまでこだわった。
▲ネック・プレートにはスペシャル・コラボレート・モデルの証である特別なシリアル・ナンバーを刻印している。
▲抱えた時にロゴが正面に来るようにデザインしたリバース・ラージヘッドも本器の大きなアクセントとなっている。また6弦の位置が従来よりも遠くなるためテンションが稼ぎやすく、ドロップ・チューニングにしても素晴らしい響きを創出してくれるだろう。