ペインティング・アーティストのNOVOLが描く
黒汁ギタリストたちのTシャツ、AROMA(アロマ)

ジャズ、ソウル、ブルース、ファンク、レゲエ、アフロ、etc……。
黒人音楽の強烈な香りを放つ画風で人気のペインティング・アーティスト=NOVOLが描く、黒汁ほとばしるギタリストたち。
そのイラストをTシャツとして展開するのが、この“AROMA(アロマ)”シリーズ。
本シリーズのイラストは月刊ギター・マガジンの連載企画として2018年7月から1年間掲載され、全12枚の作品を発表し完結した。

vol.12 off the cuff

ぶっといブルース・フィーリング

シカゴ・ブルースに端を発し、徐々にジャズやソウルへとフィールドを広げていった、“黒汁ギターおいしいとこどり”な快男児フレディ・ロビンソン。まず知ってほしいのは、ハウリン・ウルフの代表曲「Spoonful」に参加したってこと。以降、リチャード・グルーヴ・ホルムズ(org)やブルー・ミッチェル(tp)といったレア・グルーヴ系のファンク勢ともからみつつ、ジャズ・クルセイダーズに参加したり、ソロ作をリリースしていく。ぶっといブルース魂と洒脱さを持ち合わせたスタイルが最高で、ソロ作『OffTheCuff』は必聴。タイトルは、俳優がセリフを忘れないように袖口(cuff)にメモをしたことが由来の言葉で、“事前の準備をあまりしない”、つまり“即興”という意味があるらしい。なるほど、深い。よく見ると、ジャケのカフスにはフレディ本人が鎮座。

→ BUY

vol.11 Iceman

ブルース界きっての刺客。コード・ネームはアイスマン

この連載も残すところあと2回。というわけで、今回はアルバート・コリンズである(理由なし)。“ギャリーン”とした硬質なサウンドもさることながら、眼光の鋭さもなかなかのもの。ブルース界きってのキレ味抜群な音色から、“アイスマン”の異名がつけられたことは有名な話だが、この佇まいも相まってのことだというのは想像に難くない(まるで殺し屋のコード・ネーム!)。愛用のライフル、もとい、ギターはバインディング付きのテレキャスターで、フロントPUがハムに交換されているのが特徴。カポもまた彼の必需品である。本イラストは1980年にフォト・スタジオで撮影された写真をサンプリングしたもの。毛皮のコートが最高にイカすではないか。これはなかなか着こなせない。そのソリッドな音色を未体験の人は、まず名盤『Ice Pickin'』からぜひ。

→ BUY

vol.10 Rockin' Diddley's Girl!

グレッチをぶら下げて踊ったり歌ったり

今月はちょっと変化球で。ロッキン・ブルースマンのボ・ディドリーはご存じだろう。 真っ赤で四角いグレッチ・シグネチャーをぶらさげ、ゴキゲンなR&Rサウンドをゴン ゴンと響かせた偉人であり、チャック・ベリーと並び称されるロックンロールの生みの 親でもある。そんな彼のライブ・パフォーマンスには、バンド・メンバー以外にも“ディ ドリー3人娘”的なステージ・ガールがよく登場していた。彼女たちは踊ったり歌った りして楽曲に華をそえるのだが、何故かひとりだけグレッチのサンダーバードを持っ ている娘がいる(特にプレイはしない)。そのあまりのキュートな姿に、思わず今回は 彼女をチョイスしてしまった(YouTubeなどでチェック!)。ちなみに、74年のアル バム『Big B ad B o』は悶絶レベルのジャズファンク名盤。こっちも当然必聴です。

→ BUY

vol.9 Didn’t It Rain

ブルース界きっての女傑

本シリーズを始めた時、12回のうち2人くらいは女子を取り上げたかったのだが、まずはやっぱりこのお方でしょう。ブルース界きっての女傑、シスター・ロゼッタ・サープである。イラストは1964年に英マンチェスターで行なわれた野外ライブのひとコマをモチーフにしたもので、使っていない古い駅のホームをステージに、線路を挟んだ反対側のホームに観客席があるという演出が、何とも小粋ではありませんか(YouTubeで観られるのでぜひ!「Didn’t It Rain」で検索)。野太い歌声とVOXアンプから放たれるカリッカリのサウンドがたまらんです。ソロもコンパクトで好感度大。3PUのSGカスタムを抱えた姿は、アラバマ・シェイクスのブリタニー嬢にも影響を与えているはずだ。アルバム諸作でのゴスペル歌手的な風合いもまたよし。

→ BUY

vol.8 Ain't It Funky ?

祝!ブルーノート・レコード80周年

2019年、ブルーノート・レコード創立80周年を記念して、このAROMAでも勝手にお祝い。そんなわけで今月は同レーベルの代表選手、グラント・グリーンである。テーマの“Ain't It Funky ?”とはジェームス・ブラウンの曲名をもじったもので、ここでは“それはファンキーかい?”というメッセージとしてとらえてみた。煙をブッハーと吐きながら、世の“ファンクもどき”をからかうギター番長。そんなイメージですわな。ちなみにグラント番長のファンキー時代の幕開けとなったのが、JBカバーの「Ain't It Funky Now」。そこから、超絶ギター名盤『Live At The Lighthouse』へと歴史が続いていくのである(もちろんすべてブルーノート作品)。そうそう、今年はギター・マガジンでもブルーノート80周年企画をブチあげる予定みたいですよ!

→ BUY

vol.7 Jumps Again!

キザで陽気なモダン・ブルースの父

来るバレンタイン・デーに向け、ここで改めて“モテる要素”について考えてみよう。①一緒にいて楽しい/相手を愉快な気持ちにさせるユーモア精神はやはり重要だ。②お洒落/そしてファッションも大切。流行りかどうかより、清潔感に気を配りたい。③ギターが最高/これもギター・マガジンとしては絶対にはずせない点である。“そんなの全部無理だって!”と嘆きたくなるが、すべてを備えているのがテキサス・ブルースの大家にしてモダン・ブルースの父、T・ボーン・ウォーカー大師匠だ。髪型やスーツはビシっとキメキメだし、派手なアクションで観客を沸かせる。陽気なジャンプ・ブルースで大騒ぎしたあとは、「Don't Throw Your Love On Me So Strong」で一転、超ムーディに。これぞ“モテ”の極みではなかろうか。ギタリストよ、T・ボーンを目指せ。まだ間に合う。

→ BUY

vol.6 Born to Be Blue

ブルーに生まれついて

ジャズの色といったら、やっぱりブルーではないか。もちろんマイルスの『ラウンド・ミッドナイト』みたいな赤もあるし、インパルスのオレンジもある。いや、そもそも黒じゃないの?なんて言われると、確かに……と納得しそうにもなる。でも、やっぱりブルーにしておきたい。そしてギター史の中には、生まれながらにその“ブルー”をまとった天才がいる。その頂点のひとりがウェス・モンゴメリー。まさに、Born to Be Blue。ブルーに生まれついて、だ。ちなみにこれはジャズ・スタンダードのタイトルで、過酷な(つまりブルーな)境遇への嘆きを歌った名曲でもある。もちろんウェスも演奏していて、これがまたとてつもない。スロー・テンポで紡がれる太い音色と煙たいムードは、今回のイラストに最も合う曲と言い切ってしまいたい、大ウェス名演なのだ。

→ BUY

vol.5 TOPS!

シカゴ・ブルースの巨人に愛を込めて

“シカゴ・ブルース”と口の中でつぶやくだけで、大して知らないくせにちょっと強くなってイキった気分になったことは誰しも経験済みだろう(あるよね?)。“シカゴ・ブルースの隠れ名盤”なんて触れ込みのアルバムを買おうものならもう大変で、いかり肩で風を切って歩きつつ、“街頭でカバンの中身チェックでもされないかしら”とソワソワしたり、聞かれてもないのに“あ、そうそう、今日たまたまシカゴ・ブルース買ってさぁ”なんて、今思い出したかのような小芝居をしたりする。これがサザン・ソウルやLAメタルだとまた微妙に気分が違っていて、やっぱりギター弾きにとっては特別な文脈があるのだ。今月は、そんなシカゴ・ブルースの頂点のひとりに最大のリスペクトと愛を込めさせていただいた。詳しくはギター・マガジン12月号『オーティス・ラッシュ追悼特集』をご一読あれ。R.I.P!

→ BUY

vol.4 Right on!

ペンタ一発で押し切るゴキゲンなジャズファンク

今月のテーマは“Right On !”。調べると“右に”という以外に“そのとおり!”とか“そのまま続けろ!”という同意の意味もあるそう(英和辞典 Weblio辞書調べ)。まさにこのブーガルー・ジョー・ジョーンズにぴったりな言葉ではないか。少々のミスもヨレも何のその、ペンタトニック一発で軽快に弾きまくりまくる豪腕っぷりには、“よっ! イイね!”と思わず合いの手を入れたくなってしまう。彼のリーダー作『Right on Brother』(1970年)も“よっ兄弟! 今日もやってるねえ!”てな具合だ(実際は政治的な意味だろうか?)。特に「Brown Bag」、「Right On」は、ファンク期のグラント・グリーン好きには激オススメ。そんなファンキー兄貴の愛器はギブソンのバーニー・ケッセル・シグネチャーで、イナたい音色も超ゴキゲンである。

→ BUY

vol.3 Mellow Soul

マイアミ・ソウルの至宝

ギター・ソロとスキャットのユニゾンと言えばそれはもう、クロスオーバーの怪物ジョージ・ベンソンが筆頭で間違いない。のだが、ベンソン・スキャットの代表作『Breezin'』のリリースより2年前に、マイアミ・ソウルの至宝=リトル・ビーバーがちょっぴりと披露していたこともお忘れなく。それが1974年の名盤『Party Down』で、表題曲では、ゆったりとしたグルーヴに哀愁たっぷりのギター・ソロ&スキャットがぶちかまされる。平成最後の過ぎ去った夏へ思いをはせるのに、これ以上のメロウ・ギターがあるだろうか?(極上のベースは若きジャコ・パストリアス!)。ジャケで手にするのはギブソンL-5CESだ。ギタリストとしての本領は『When Was The Last Time』(1976年)収録のインスト曲「We Three」でも発揮。

→ BUY

vol.2 TROPICAL

極上トロピカルな楽園ギタリストの頂点

夏真っ盛りの時期にぴったりなのが、カリブの島国トリニダード・トバゴ出身のリン・テイトだ。少々マニアックな存在だが、60年代のジャマイカにおけるスカ〜ロックステディ創生期に多大な影響を与えた人物であり、そのスタイルは70年代以降のレゲエ・ギタリストたちにも受け継がれている。テクニカルなタイプではないものの、リバーブの効いたイナたい音色で朗らかにメロディを奏でる芸風は、もうトロピカルとしか言いようのない気持ちよさだ。スティール・パンから着想を得たという、ポコポコした単音ミュートもまた心地よし。まさに楽園ギタリストの代表格である。愛器はちょっぴりビザールなヘフナーの172スーパー・ソリッドV2で、これも独特なトーンに影響しているのだろう(意外にも60年代ジャマイカでは愛用者多し!)。

→ BUY

vol.1 Twang!

これぞロッキン! なR&B系ブルースマン

“トゥワング”とは、“弦をハジいた音”の意。おもにカントリーや白人系のスウィング・ジャズ、あるいはテレキャスターの鳴りを表現する時に、“トゥワンギー”なんていう言葉を見かけたこともあるだろう。本項の主役、ミッキー・ベイカーは1925年生まれのリズム&ブルース系ギタリスト。50年代のニューヨークではセッションマンとしても活躍し、レイ・チャールズらの録音にも参加している。1959年のソロ作『The Wildest Guitar』では、初年度ジャズマスターを文字通りハジきまくり。“ギャリーン”と硬質なのにジューシィでもある独特のドライブ・サウンドは、ま・さ・にトゥワング!と呼びたいシロモノである。ジャズの素養もあったとかで、知性もワイルドさも兼ね備えたロッキン・ブルースな芳香は、ギタリストなら体験必至なのだ。

→ BUY

NOVOL

1979年生まれのペインティング・アーティスト。東京在住。
2002年、JAZZに衝撃を受けて絵を志す。
以来、人間と音楽の漲る関係を、人間性溢れる顔をベースに描き続けている。
インプロビゼーションさながらの画力とスピードはインパクト絶大。
現在までに、様々な手法で作品を残しながら、 ジャンル問わず様々なアーティストやコンピレーションのCD/LPジャケットや、 フライヤー&ポスター等、音楽関連のデザインワークを数多く手掛け、 アパレル、企業、雑誌へのイラストレーション提供や、 最近ではTV番組のOP映像を担当するなど、幅広く様々なコラボレーションを展開している。
さらに全国各地をツアーで周り、店舗内外装壁画やライブペインティングなど精力的に描き続け、 人との出会いを楽しみながら、活動の幅を広げている。