リットーミュージック

DISC 2

4Everybody’s Got Something To Hide Except Me And My Monkey

エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー

1968年6月26日、27日、7月1日、23日アビイ・ロード第2スタジオで録音

漫画でヨーコを、ジョンにしがみつく「オノ」という猿と書かれ、怒ったジョンが作曲

 ジョンがマハリシの口癖だった「Come on, take it easy」からインスパイアされ作った曲。当初は「Come on, Come on」というタイトルだった。

 周りからジョンとヨーコは様々な形で批判的な目で見られていた。この曲を書く前にも、漫画で、ヨーコをジョンの背中にしがみつく「オノ」という名前の猿として描かれたことに腹を立てていたという。

 ジョン「僕とヨーコの歌。僕ら2人を除いてみんなこだわりすぎていた。彼女はここで何しているんだ。なぜ彼女と一緒にいるんだ、という具合にね」。

 「モンキー」とは1940年代、50年代にジャズ・ミュージシャンの間で使われていたヘロイン中毒を意味する隠語でもあった。

 ポールは「ジョンはハードなドラッグにのめり込むようになった。“ フィックス” とか“ モンキー” とか、他のメンバーが関わってもいない世界の専門用語を使い始めた。どうやって彼を助けたらいいのかわからなかった。これ以上悪くならないことを願うしかなかった」と言っている。

 リンゴのバス・ドラムとスネア・ドラムの「♪ドンッタ・ド・ドンッタ・ド・ドンッタ」の間に「♪(ン)・ッキャ(E)・ッキャ(A)・ッキャ(A)」というギターの鋭い音が入り4小節弾いたところに5小節目から16分音符のやかましい消防用のベルの音(なんとこのベルはジョンとジョージのギターのボリュームの大きさに、ベースで対抗する気がなくなったポールがリンゴの横で巨大な消防用のベルを鳴らした)と、ジョージがリード・ギターの速いフレーズのリフを繰り返す。このリード・ギターのリフは基本的な雰囲気は同じなのだが、3拍目、4拍目が微妙に毎回違っている。

 リズム・トラックではポールのハンド・ベルの他、リンゴがオーバー・ダビングしたショカーリョ(サンバで使うシェイカーの1種)なども入っている。

 オーバー・ダビングしたポールのベースは相変わらずうまい。ポールはこのベースを弾くために、再びジェームズ・ジェマーソンとジェームズ・ブラウンを参考にしたという。一聴するとどうということのないベースのように聴こえるのだが、音の選び方や繰り返しの直前にちょこっと入れるフレーズや、エンディングのフェイド・アウトに入る直前の、ブレイクの後3小節目のコード「E」でのフレーズから4、5、6小節目のコード「D」で同じ音を続けるセンスなど抜群のカッコ良さだ。

 6月26日録音分はボツ。翌27日のOK テイクは二度のミックスでテープのスピードを上げたために、当初3分7秒だったものが最終的に2分24秒になっている。7月1日にポールのベースとジョンのリード・ボーカルをオーバー・ダビング。7月23日に3回目のリミックスでバック・ボーカルと手拍子をオーバー・ダビングした。

 騒々しいサウンドという印象なのだが、編成的には割合普通の演奏。この曲がやかましく感じるのは、すべてポールが鳴らした消防用のベルの音に原因がある。

 ビートルズが好きだったファッツ・ドミノのカバー・バージョンが落ち着いたロックン・ロールといういい味を出している。

<使用楽器>
ジョン:エピフォン・カジノ
ポール:リッケンバッカー4001S、消防用の巨大なハンド・ベル
ジョージ:ギブソンSG
リンゴ:ドラムス、ショカーリョ(Chocalho:大きな算盤の玉の替わりに、ジングル〈プラチネラ〉が沢山付いたような楽器。両手で持ち上下に振って音を出す。リズムをキープする重要な役目がある)
不明:ハンド・クラップ