リットーミュージック

DISC 2

3Mother Nature’s Son

マザー・ネイチャーズ・サン

1968年8月9日、20日、アビイ・ロード第2スタジオで録音

ポールの理想郷を歌った弾き語り曲

 ポールが、インドでマハリシ・ヨギの自然に関する講義に感銘を受け、リバプールに帰ってから書き上げた曲。同じ講義に刺激を受けたジョンがこのとき作った曲が「Child Of Nature」という曲だったが、後にジョンは詞を書き変え、「ジェラス・ガイ」と名を変えてソロ・アルバム『イマジン』に収録した。

 8月9日と20日にレコーディングされた。20日の夜、ジョージは急にギリシャ行きを決めて17 日に出発していて不在。別のスタジオで「ヤー・ブルース」と「レボリューション 9」のレコーディングの完成に向けてジョンとリンゴが作業していた。

 ポールのほうもソロ・レコーディングの仕上げにかかっていた。このセッションでテクニカル・エンジニアだったアラン・ブラウンは夜も更けたシーンとした建物の中で、ポールの歌う「♪ Find me in my field of glass」という表現に感動したという。ドラムスを録音するときにボンゴのようなサウンドが欲しいということだったので、スタジオを出て廊下の真ん中にドラムスをセッティングした。

途中でジョンがスタジオに来て異様な緊張感

 ケン・スコットによると、ビートルズ内部がうまくいっていないことを感じさせる事件があったという。「ポールとジョージ・マーティンがブラス奏者たちとアレンジについて打ち合わせをしていた。大変和やかで、みんながご機嫌だった。そこにジョンとリンゴが入ってきたとたん、スタジオの空気がピーンと張りつめた。雰囲気がガラッと変わったんだ。それが10分くらい続いて、2人が出ていくと、また元のいいムードに戻ったのさ、あれは異様だった」。

 ポールはこの日、他の曲の録音もしたが、ジョンとリンゴは不参加だった。

 ポールのコード「D」を基本にしたイントロの響きが美しい。2弦の3フレット目の「D」、3弦の2フレット目の「A」、4弦開放の「D」はそのままで、2拍ごとにハンマリングやコード・ストロークに変化を加えながら、1弦の音だけで5フレット目の「A」から3フレット目の「G」、開放の「E」、2フレット目の「F#」などを使ったフレーズを展開させている。

<使用楽器>
ジョン:不参加
ポール:マーティンD-28、ドラムス、ティンパニ
ジョージ:不参加
リンゴ:不参加
奏者不明:ホルン