リットーミュージック

DISC 2

10Savoy Truffle

サヴォイ・トラッフル

1968年10月3日、5日、トライデント・スタジオ/11日、14日、アビイ・ロード第2スタジオで録音

ジョージが書いたロックン・ロールの傑作

 ジョージとエリック・クラプトンがよく一緒にいた頃、クラプトンは虫歯だらけにもかかわらず、チョコレートを毎日異常なくらい大量に食べていた。ジョージも感化され、沢山食べるようになっていたという。ある日クラプトンがジョージの家に来ていたときに、ジョージはテーブルの上にあったマッキントッシュ社のチョコレートの詰め合わせ「グッド・ニューズ」を見て、箱の裏にあったチョコレートの名前を使って曲を書いた。このチョコレート詰め合わせには「クリーム・タンジェリン」、「モンテリーマート」、「ジンジャー・スリング」、「コーヒー・デザート」などが入っている。「サヴォイ・トラッフル」も実在のチョコレートだが、「チェリー・クリーム」と「ココナット・ファッジ」はジョージの創作。

 詞に悩んでいたときにデレク・テイラーから、友人が作った映画『You are what you eat』のタイトルを使ってはどうか?という提案があった。ジョージは言葉数の関係で「♪ You know that what you eat you are」に変えた。「♪ We all know Ob-La-Di-Bla-Da」という歌詞は散々、レコーディングに時間をかけたポールへの皮肉だろう。詞の始まりの3行は「Creme tangerine and montelimat ~ Yes, you know it’s GOOD NEWS」までは、まるでチョコレートのCMソング。

 ジョンはこのレコーディングに参加していない。リンゴのスネアから入るのだが、スネア・ドラムの後のクリス・トーマスが弾くホーナー・ピアネットの1小節目が4分の4拍子、次の1小節が8分の7拍子、歌に入った歌いだしの「♪ Creme tange ~」までの1小節が8分の6拍子、次の4分の4拍子になる小節の1拍目に「rine」が入ってリズムがスタートするという仕掛けだ。わかりやすく言うと、スネアの後キーボードの部分が「1と2と3と4と、1と2と3と4のウラ(と)」のタイミングで「♪ Creme tange - (クリームタンジェ)」と3拍の間はバックもリズムもないブレイク状態で歌いだし、「rine(リン)」でリズムが入るのだ。とうとうジョージも、レノン変拍子病に侵され始めたようである。カウントがないために、リズムのアタマが見つけにくいイントロになっている。

 スネアにディレイがかっているために常にタカトコ、タカトコと聴こえてくる。

 ジョージはボーカルの「♪ Creme tangerine」のメロディをディストーションをかけたストラトキャスターのユニゾンで弾く。バッキング・トラックでは、ボーカル・ダビングのときに弾いたコード・カッティングが聴こえている。これもジョージのギターだ。「♪A ginger sling with…」からサビ前の「♪ After the savoy truffle」まではポールがハーモニーをつけている。

 ブラス・セクションのアレンジはジョージ・マーティンの勧めでクリス・トーマスが書いた。2人のバリトン・サックスと4 人のテナー・サックスは素晴らしいサウンドを演奏した。しかしその録音が終わったとたん、ジョージはブラスに大量のディストーションをかけることをエンジニアに指示した。

 ジョージはミュージシャンたちがプレイバックを聴きにコントロール・ルームへ上がってくると「聴いてもらう前に、君たちの素晴らしいサウンドに手を加えたことを謝っておきます。でもこれが僕の出したいサウンドです」と言った。ミュージシャンは喜んではいなかったが、ジョージの意向を理解していたという。

 ポールのベースは休むことなく実にカッコいいノリでプレイしている。どんな曲でもそれを一番生かすフレーズをわかっている。やはりベーシストとしても天才だ。

 リード・ギターはジョージがオーバー・ダビングしているが、自分の弾いたギターに掛け合いで弾いているのが面白い。

<使用楽器>
ジョン:不参加
ポール:リッケンバッカー4001S
ジョージ:フェンダー・ストラトキャスター
リンゴ:ドラムス、タンバリン、ボンゴ
クリス・トーマス:ホーナー・ピアネット、ハモンド・オルガン
テナー・サックス:アート・エレフスン、ダニー・モス、ハリー・クライン、デレク・コリンズ
バリトン・サックス:ロナルド・ロス、バーナード・ジョージ