DISC 2
12Revolution 9
レボリューション9
1968年5月30日、6月6日、11日、21日、アビイ・ロード第2スタジオ/6月10日、第3スタジオ/6月 20日、第1、第2、第3スタジオで録音
ジョンがポールの好きなアバンギャルドを横取りした
ジョン「〈レボリューション9〉にはこれまでのどの曲よりも時間をかけた。アルバムに収録された〈レボリューション1〉はすごく長かったんだ。そのフェイド・アウト部分を取り出して、20種類のテープ・ループが重なっている。テープを切ったり、逆回転させたりしてサウンド・エフェクトを作り、10台くらいの機材にスタッフを配置しすべてのテープのボリュームを上げて僕がリアルタイムにミキシングした。その間ずっとヨーコがそばにいて、どのループを使うべきか決めてくれた。ある程度ヨーコの影響を受けた作品だったと思う」。
ビートルズの4人がスタジオに揃ったときに「レボリューション9」をジョンが誇らしげにプレイバックしたが、ポールの顔には暗雲が立ちこめたという。初めて聴いた「レボリューション9」に失望したせいだった。ジョンは期待を込めてポールを見たが、ポールの答えは「悪くない」の一言だった。リンゴとジョージは一言も口をきかなかった。ジョンは「悪くないって? どうせお前にはちんぷんかんぷんだろうよ。この曲はオレたちの次のシングルにするべきだぜ!」と、そこにまったく空気の読めないヨーコが「わたしもジョンに同感よ。最高だと思うわ」と発言した。自分が5人目のビートルズになったつもりのようだった、という。
あらゆる音楽に精通していたポールは、ジョンよりもずっと早いうちにアバンギャルド音楽にも夢中になっていた。自分でも沢山の「レボリューション9」のようなサウンド・コラージュ作品も作っていた。それゆえに、この曲をビートルズの作品とみなすのはさすがに無理だと思っていた。
『ホワイト・アルバム』の曲順決めでは絶対に「レボリューション9」を入れたくないというポールと、何があっても入れろ、というジョンの間で、大もめにもめたという。結局いつものようにジョンの意見が取り入れられたとき、ポールは落胆した。これでジョンのほうがより革新的なアーティストと見なされるようになることは必至だったからである。ジョージは「ビートルズっぽくないし、ヘヴィすぎて、この曲は聴かない」と言っている。
ビートルズの「レボリューション9」のカバー・バージョンはさすがにないだろうなと思いながら、筆者の所有しているCDをちょっと探しただけでも、『Live Phish 13』のように、ライブ・レコーディングしたカバー・バージョンのほか、Kurt Hoffman’s Band of Weeds、Grunt、The Thurston Lava Tube、Neil Cowley、The Durham Ox Singers、Will Taylor and Strings Attached などがすぐに出てくる。とてもビートルズとは思えないような曲でも、多数のバージョンでリリースされているところもビートルズのすごさである。
ちなみに公式リリースの213曲すべてのカバー・バージョンが存在する。おふざけとしか思えない「ワイルド・ハニー・パイ」や、こんなサウンド・コラージュの「レボリューション9」のようなものまで、すべての曲のカバーがリリースされているのだ。
<使用楽器>
ジョン:サウンド・エフェクト、ボイス
ポール:不参加
ジョージ:サウンド・エフェクト、ボイス
リンゴ:不参加
オノ・ヨーコ:サウンド・エフェクト、ボイス