DISC 1
8Happiness Is A Warm Gun
ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン
1968年9月23日、24日、25日、アビイ・ロード第2スタジオで録音
銃の広告に「Happiness Is A Warm Gun」という言葉、正気の沙汰ではないと思った
ジョージ・マーティンがスタジオに置き忘れた銃専門誌の表紙に書かれていた「Happiness Is A Warm Gun」というタイトルを見て、驚いたジョンが作った。麻薬注射の歌だからという理由で、ラジオで放送禁止になった。
ジョン「銃の広告に“Happiness Is A Warm Gun” という言葉が載っている状況は、正気の沙汰ではないと思ったよ。よくそんなことが言えるなぁと。ヘロインとは無関係だよ。あたたかい銃っていうことは、何かを撃ったばかりの銃っていうことだからね」。
ポール「これはあたたかい銃を握って幸福だと思ってる連中を揶揄した曲なんだ。ボーカルもすごいし、歌詞もいいし、テンポがしょっちゅう変わる面白い曲だ。ジョンらしい」。
ポールとジョージはこのアルバムの中では「ハピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン」が一番のお気に入りだと発言したと報道されている。ジョンは「これは僕のベストの作品のひとつだと思う。美しい曲だし、あの曲のハプニングすべてが好きなんだ」。
ポール「こんな歌を書いたジョンが凶弾に倒れて悲惨な死を遂げるなんて」。
ジョンがタイトルを考えているうちに、セクシーな意味合いを持ち始めた
ジョンがこのタイトルを考えているうちに、セクシーな意味合いを持ち始めた。銃は男性の象徴となり、「マザー・スペリアー(女子修道院長)」のモデルは間違いなくオノ・ヨーコだった。歌詞の大体の意味は次の通り。
♪修道院長さん 撃ってくれ、幸せは撃ったばかりの銃お前をこの腕に抱きしめ、お前の引き金をこの指に感じるとき誰も俺には手出しができない、幸せは撃ったばかりの銃
ジョンはこの曲は3つの曲をつなぎ合わせて作ったと言っている。構成が複雑で、リズム・トラックは70テイク録音された。主な理由はリズムの複雑さで、4分の3拍子と4分の4拍子が入り組んだ構成だったことによる。テープにはこの後どのように演奏するか、どの部分がやさしくて、どの部分が難しいか、を話し合うビートルズの声が残っているという。
このアルバムでジョンがよく使うようになったスリー・フィンガー・ピッキングで始まる。「♪ I need a fix」で始まる最初の歌の1行のメロディをミックス・ダウンでギターの演奏に差し替えることにした。このとき、歌の消し方が足りずに、ジョンの歌の最後の低音での「down」が聴こえている。
ジョンが3拍子で歌うバックで、リンゴは4分の4拍子のままスネアを叩いている
この後の、変拍子の部分の数え方は「♪Mother Superior, jump the gun, イチ、ニ、Mother Superior, jump the gun イチ、ニ、サン」と数えて歌う。これを3回繰り返すと歌いやすい。
ジョンが3拍子で歌う「♪When I hold you in my arms ~」のリズムで、リンゴのドラムがその前の4分の4拍子のまま2拍、4拍でスネアを叩いているために、アクセントの位置がずれてくる。とても歌いにくいのだが、一度ドラムだけを聴いてみてほしい。リンゴのドラムだけは、その前のフレーズ「♪ Happiness is a warm gun」からずっと4分の4拍子を叩いているのがわかる。そして「♪ Because ~」にも自然にすんなり入っている。またこれもビートルズ・マジックだ。
<使用楽器>
ジョン:エピフォン・カジノ
ポール:リッケンバッカー4001S、ピアノ
ジョージ:ギブソン・レス・ポール
リンゴ:ドラムス、タンバリン