PICK UP
ジョージ・コリアス(NILE)が"狂速"フット・ワークのルーツを語る!|リズム&ドラム・マガジン2017年8月号より
Interview&Text by Rhythm & Drums Magazine Interpretation&Translation by Miki NakayamaPhoto by Taichi Nishimaki Special Thanks by ISAO[Spark7]/Drum Station & IKEBE GAKKI Co., Ltd.
BPM280を超える高速ツーバスで世界の度肝を抜いたギリシャの鉄人、ジョージ・コリアス。彼がギタリストのISAO率いるSpark7のライヴ出演のため、去る4月下旬に来日。1週間に満たないショート・ステイながら、リハ&本番に加え、ドラム・クリニックを行うなど、精力的に活動し、日本のファンの前で、その超人的なフット・ワークを惜しみなく披露してくれた。ここではそんな彼の"狂速"スピード・ドラミングを掘り下げるべく、さまざまな角度から徹底検証! 何と付録DVDには、フット・ワークについてジョージ自身がレクチャーした教則映像を独占収録!! 世界最高峰の"足技"に迫ってみたい!!!
ツーバスをプレイするときは利き足を使うことが圧倒的に多い
一昨日がクリニックで、昨日がライヴ初日でしたが、日本の観客の反応はどうですか?
○素晴らしい反応だよ、いつも通りね。日本人は世界で一番恭しく、ナイスで、忠実なオーディエンスだ。日本に来ると必ず驚かせるのが、日本人が自然に僕らを敬ってくれること。これは他の国では滅多にないことだね。そしてこれまでに何度か日本に来ているけど、今回はこれまで以上に楽しいよ。ISAOのバンド、Spark7でプレイできることが一番の理由さ。メンバーは全員最高のミュージシャンで、本当にワクワクする。僕は普段、エクストリームな音楽をやっているから、スタイル的にもSpark7の音楽は新鮮だ。昨日のライヴを見る限り、オーディエンスは夢中で楽しんでいたようだし、演奏している僕達も本当に楽しんでいるよ。
ークリニックも拝見しましたが、みんな熱心に質問していましたね。
○熱心だったね。みんな質問しそうに見えなかったのに、1人が質問をした途端にみんなが手を上げ出したから、僕もちょっと驚いたよ。でも僕は一生懸命何かを学ぼうとしている人達に自分が知っていることを教えるのが大好きなんだ。
ー世界中でクリニックをやっていますが、やはりフット・ワークに関する質問が多いですか?
○そうだ(笑)。僕としては足だけじゃなくて、全体的に完成されたドラマーを目指してすべてに注意を払っている。それにいろんなスタイルの音楽をプレイするのも好きなんだ。とはいえ、どんなドラマーにも得意な分野があるし、それがファンを獲得する理由でもあると思う。僕の場合、その分野がエクストリーム・ミュージックで、このスタイルではツーバスとブラスト・ビートが大きな役割を占めるから、どうしてもフット・ワークの質問が多くなってしまうわけだ。でもつまらないと思ったことは一度もないし、時には驚かされることもあるね。
ー先ほど撮影したレクチャーの中でも説明していましたが、ツーバスの上達には、利き足(リーディング・サイド)を強化することが重要という話が印象的でした。
○この点を強調するようになったきっかけは、"右足と左足を同じにしないといけない"と説くドラム講師があまりに多いことなんだ。僕自身、右と左を同じにすることの意味を理解しようと努力したけど、場合によっては両足を同じレベルにしなくても大丈夫なものもあると思うんだ。ドラムの場合、練習に長い時間を費やしてまで両足を同じレベルにする意味があるのか疑問だね。右手と左手を同じレベルにすることは役に立つかもしれないけど、足となると話が違ってくる。ツーバスをプレイするときは利き足を使うことが圧倒的に多いのさ。右利きだとしたら、右足の稼働率が97%くらいになるし、そうなると左足はたったの3%だ。また、右足と左足が何をプレイするのかを分析してみると、(右利きの場合)右足がビートを刻み、左足はそれを補助するだけだろう? 僕がやっているスタイルでは、超高速のツーバス・パターンもプレイするから、例えばBPM260で演奏中に、2番目の(左足で踏む)音を耳で聴いて把握するのが非常に難しい。"聴く・把握する・考える"を一瞬でやらないとダメだからね。だから僕は利き足である右足を軸に考えることにした。これだと実際は16分でプレイしていても、考えるのは8分になる。この考え方は理に適っていると思うし、役に立つかわからない左足の練習に時間を費やすよりも、この考え方を取り入れることをお勧めするよ。
ーものすごくテクニカルなプレイをしているのに、ツーバスに関しての基本概念は"利き足を使え"とシンプルな点が面白いですね。
○そうだね。若いドラマーには理解するのが難しいかもしれないけど、ドラム歴30年くらいの人には理解できると思う。例えばスピード。僕に届く"スピードを上げる方法を教えてくれ"というメールの数、メッセージの数は君達の想像を絶するものがあるよ。道端で僕を見かけたドラマーに質問されることも多いね(笑)。彼らはスピードを上げる特効薬があると思っているかのようなんだ。でもスピードを上げたいなら、高速でプレイする練習をするしかない。それ相当のテクニックや概念は確かにあるよ。でも、結局は練習しながら自分を追い込むしかないんだ。それ以外の方法はゼロだ。特効薬も魔法もない。苦しみながら練習するしかないのさ。筋肉の動かし方を分析することも役立つけど、苦しみながら練習して、自分を追い込まないことには到達したいレベルには行けないってこと。だってBPM260でプレイすることを実感しないと、クセも矯正できないし、テクニックを習得することもできない。概念がシンプルな理由はここにあるよ。
スウィーベルを真剣に練習してもスピードは上がらない
ーそもそも、今みたいに高速でプレイするようになったきっかけは何ですか?
○僕はアラフォーだけど、僕らの世代のメタル・ファンのドラマーが、子供の頃に憧れたのはメタリカのラーズ(ウルリッヒ)だった。ちょうどメタリカの『...And Justice for All』が出た頃で、このドラムが高速だったんだ。メタリカ以外にもスレイヤーやセパルトゥラなどが活躍していた時代で、当時の僕の目標は"自分が演奏したい音楽を演奏できるようになる"ことだった。ドラマーになりたいとかじゃなくて、自分が夢中になっている音楽をプレイしたかった。そういう音楽が好きなドラマーはとにかく速く叩きたがるし、スピードを限界まで速くしようとする。メタル好きであればなおさら速いバンドのプレイにチャレンジするわけだ。僕の場合、メタル以外の他の音楽を聴く心の余裕ができるまでに6〜7年かかったと思う。初めてデイヴ・ウェックルを聴いたときに、"何てこった、メタルとはまったく違うけど、美しいじゃないか!"と思った。それでデイヴ・ウェックルのプレイを真似てみようと思ったんだ。もちろん、うまくはいかなかったけど(笑)。
品種 | 雑誌 |
---|---|
仕様 | B5変形判 / 168ページ / DVD付き |
発売日 | 2017.06.24 |