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"真夏の宴"Joy and Aggression〜An Evening With Marty Friedman 2017年7月28日 目黒Blues Alley Japan|ギター・マガジン ライブレポート
Text by Hitoshi Sasada / Photo by Mikio Ariga
3年ぶりとなるニュー・アルバム『Wall of of Sound』のリリースを目前に控えたギタリスト、マーティ・フリードマンが目黒Blues Alley Japanのステージに立った。いつもとは違う雰囲気の会場で、「マーティ節」のギターをじっくりと聴かせてくれた。当日のステージの様子をお伝えしよう。
今回の会場となった目黒Blues Alley Japanは、柿落としのステージにあのマイルス・デイヴィスを迎えた、由緒正しき「ジャズ・クラブ」だ。「マーティには似つかわしくない会場」。ライブを見るまで、筆者はそう思っていた。しかし、自身を「完璧主義者」と表現するマーティは、しっかりとこの会場に合わせたセット・リストを用意し、ジャズ・クラブならではの雰囲気の中、観客を静かに酔わせる演奏を披露した。
1曲目と2曲目は、1992年発売のアルバム『Scenes』から、「West」と「Night」。落ち着いた雰囲気で内省的なニュアンスを感じさせる。しみじみと「いい曲だな」と思わせる選曲だ。あまりに自然に演奏する様子から、普段のライブでも披露している曲かと思いきや、マーティはMCで「アルバムのレコーディング以来、演奏したことがない」と言う。これには驚いた。ほぼ初見のような曲でも、しっかり聴かせる演奏を披露するマーティの演奏能力の高さを強く感じた。そして、マーティの要望にしっかり応え、マーティを着実に支える演奏を披露したバンド・メンバーの技術の高さも印象に残った。
マーティは来日以来、演歌やクラシックなどさまざまなジャンルのミュージシャンと共演を重ねてきた。その過程で、信頼できる日本のミュージシャンとの人脈を作ってきたのだろう。マーティが今回集めたバンド・メンバーの演奏を見て、日本におけるマーティの活動歴と、その活動の幅広さを改めて思い返した。
マーティはMCでさらに「今回は夏の夜のお祭りだから、ほとんど演奏したことがない曲をやりたい」と語った。続く3曲目と4曲目は、2008年発売のアルバム『Future Addict』収録の「Tears of an Angel」と、2002年発売の『Music for Speeding』収録の「Lovesorrow」。マーティならではの日本的な"泣き"を存分に楽しめる曲だ。どちらもあまり脚光が当たっていない曲だが、マーティの情感がこもった演奏を見て、曲の価値を再認識させられた。
続く2曲は日本人アーティストのカヴァー集『Tokyo Jukebox』、『Tokyo Jukebox 2』から、中島美嘉の「雪の華」と尾崎豊の「I LOVE YOU」を披露。原曲の雰囲気をとどめながら、変幻自在に弾きまくるソロは、マーティにしか演奏できないものだろう。
ここで「夏の夜のお祭り」らしく、じゃんけん大会。最後まで勝ち抜いたのは日本在住のオーストラリア国籍の男性。これにはマーティも苦笑い。その男性をステージに上げて、日本語で会話する様子には、ステージからも笑いが起きていた。マーティ自身も「なぜオーストラリアの人と日本語で会話しているのだろう?」と不思議がっていた。
いよいよライヴは終盤、ここでニュー・アルバム『Wall of Sound』から「For A Friend」。ヘヴィでプログレッシヴに仕上がっているというアルバムの中では、マーティらしい泣きのギター・ソロを満喫できる曲だ。あとは『Scenes』収録の「Trance」、『LOUDSPEAKER』収録の「Devil Take Tomorrow」と続けて、ひとまず演奏終了。アンコールの声に応えて『Inferno』から「Undertow」を披露。いつもは演奏しないという曲を中心にした今回のライブでは、マーティのまだ知らなかった側面を満喫できた。
ちなみに、今回のライブは1部、2部の入れ替え制で、筆者は2部に参加したのだが、後日マーティがFacebookに公開した1部のセット・リストを見て驚愕した。なぜなら、2部とはまったく違う曲を選びながら、2部と共通するコンセプトでまとめてられていたからだ。さらに、相川七瀬の飛び入りもあったとのこと。まさに「完璧主義者」たるマーティならではの強いこだわりを垣間見た思いである。
そんなマーティの最新インタビューが読める『ギター・マガジン2