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ザ・エックス・エックス【プロダクション・レポート】|サウンド&レコーディング・マガジン2017年10月号より
Text by Paul Tingen, Translation by Takuto Kaneko, Photo by Laura Coulson
ロミー・マドリー・クロフト(vo、g/写真中央)、オリヴァー・シム(vo、b/同右)、ジェイミー・スミス(k、prog/同左)の3人から成るロック・バンド、ザ・エックス・エックス。彼らの3rdアルバム『アイ・シー・ユー』がリリースされたのは2017年1月の第2週だが、その時点で今年の"Album of the Year"の有力な候補として見られている。そのサウンドを担っている重要人物は3名。まず1人がメンバーのジェイミー・スミス。これまでのアルバムでもレコーディングを自ら行ってきた。次の1人がロデイド・マクドナルド。アデルやボビー・ウーマックのプロデュースで知られる人物で、過去作に引き続き今回も共同エンジニア/プロデューサーを担当した。そしてこれらの2人にも増してサウンド面で注目すべき人物こそがイギリスの人気エンジニア、デヴィッド・レンチだ。ここでは『アイ・シー・ユー』に収録された「Say Something Loving」のミックスについてレンチが詳細を語ってくれた。
売り物としてあるべきフィーリングと
サウンドを目指した
ザ・エックス・エックスの新作、『アイ・シー・ユー』は、明確で非凡なアーティスティック・ビジョンのもと、2年間にわたり多大な労力が費やされて制作が行われた。ニューヨーク、ロサンゼルス、テキサス、アイスランドのレイキャビク、そしてイギリスはロンドンと各地を転々として作業が行われたという。完成した作品を聴くと、恐らく前作と比較して大きなサウンドの向上が感じられるだろう。より深みと壮大さを増し、かつスムーズなサウンド・イメージを持ち、雄大でワイドなリバーブとわずかなディレイがとても印象深い仕上がりとなっている。魔法のようにも感じられるこの質の向上に貢献した要素の一つとして、今作での手練れのミュージシャンの参加が挙げられる。実際にこの作品に参加したプレイヤーはチェロのピーター・グレッグソンとビオラのローリー・アンダーソン、そしてオーストラリア人ドラマーのステラ・モズガヴァなどだ。
しかしながら、これらのゲスト・ミュージシャンがサウンドに与えた影響は比較的小さい。実際のアルバム・サウンドを彩っていった人物たちが、メンバーのジェイミー・スミス、プロデューサーのロデイド・マクドナルド、そしてエンジニアのデヴィッド・レンチだ。
レンチは2年半ほど前までウェールズを本拠とし、クライアントの求めがあったときにロンドンのストロングルームに行ってミックスを行うことが多かった。だが近年ではロンドンに仕事の場所を移したという。「皆が近くにいた方が便利だし、ウェールズのスタジオは機材が増えてきて手狭になったんだ。ミックスはDAW内で行うが、アウトボードやシンセがうちにはたくさんあるし、ハーフ・インチのテープ・マシンまであるんだ。今使っているモニターはNEUMANN KH310Aとサブウーファー、UNITY AUDIO The Rockだ。そしてノート・パソコンにAVID Pro Tools HD|NativeとAPOGEE Symphony I/Oを組み合わせて使っているよ。今ではもうほとんどこの自宅スタジオでミックスをしている。ここのサウンドに慣れているし、ほかのスタジオに行くとそこに慣れるまでに数日かかってしまうからね」
今回レンチが『アイ・シー・ユー』のすべてのミックスを行ったのは、ロンドンにあるRAKのスタジオ3だった。ザ・エックス・エックスがレコーディングを行ったのが同スタジオで、その流れで使用することになったのがその理由だという。レンチが振り返る。
「バンドの面々がミックスの最中そばにいることも私にとっては良かったよ。ミックスは2015年6月に3週間を費やして行った。最終的に14か15曲のミックスをしたから、大体1曲あたり1日半をかけていたことになるね。どの曲もある程度のレベルまで仕上げて、それからジェイミーからコメントをもらいサウンドを詰め、その日の終わりに残りのメンバーからもフィードバックをもらうという流れだったよ。ロデイドが来ることもたまにあったね」
レンチによれば、ミックスに入る前に作品のビジョンについてメンバーから示されることはなかったという。代わりに彼は、「売り物としてあるべきフィーリングとサウンドを目指した。彼らはこの作品の制作作業をずっと続けていたから、私のところに来たときには、曲ごとのフィーリングがバラけてしまっていたんだ。だからそれをまとめ上げるように努めたよ。ローエンドをタイトでソリッドにすることも重要だったが、ボーカルを最高のサウンドに磨き上げて目の前にいるかのように聴かせることこそが一番重要だった。このアルバム自体が特徴的なキャラクターを持ってはいたけれど、アメリカのラジオで流れることも考慮すると、ボーカルの存在感を上げる必要があったんだ。そのために特別なトリックを施したよ」
(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年10月号にて!)
品種 | 雑誌 |
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仕様 | B5変形判 / 260ページ |
発売日 | 2017.08.25 |