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【Interview】フー・ファイターズ|サウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号より
Text by Kentaro Shinozaki, Interpretation by Mariko Kawahara
"サンレコ、ロック雑誌みたいだな"......表紙を見てそう思った読者には、こう言わせていただきたい。デイヴ・グロールはNEVEコンソールが大好きなのだと。我々と同じくレコーディング・ツール好きなのだと。デイヴがフロントマンを務めるフー・ファイターズが、3年ぶりの新作『コンクリート・アンド・ゴールド』をリリースした。本作ではアデルをグラミー賞に導いた敏腕プロデューサー=グレッグ・カースティンを迎え、直線的なロック・チューンだけでなく、多彩なコーラス・ワークを用いたポップスまで、新たなサウンドの境地に到達。ここでは曲作りの中心となっているデイヴとドラマーのテイラー・ホーキンスにインタビューを敢行。誌面ではグレッグ・カースティン、そしてエンジニアのダレル・ソープへの取材、フー・ファイターズの拠点となるスタジオ606、今回録音を行ったイーストウェスト・スタジオの写真も掲載している。
Photo:Brantley Gutierrez
"デジタルっぽいサウンド"を避けるため 人間らしい部分を残すようにした
ー新作は大きなサウンド変化が感じられますね。
テイラー 幅を広げたかったんだ。ここ何作かはベーシックなレコーディングで、"テープに収めようぜ!"みたいなノリだった。でも、今回はコンピューターを使ったんだ!(笑)。自分たちのサウンドに挑戦するときが来たんだよ。でも、すべてを完ぺきにはしなかった。新作には完ぺきでないものがたくさん入っている。つまり、全部をコンピューターで修正するようなことはしなかった。ソフトでやれることを活用しただけだ。コンピューターを使った方がずっと速く作業できる。テープだと巻かないといけない。編集にも時間がかかる。コンピューターだと当然ながらそれが無い。最終的に、前作とは違ったサウンドに到達することができたと思う。テクノロジーを駆使することによって、今回はもっとトリップするようなアルバムに仕上がった。サイケデリックな感じのアルバムだと俺は思うね。
ー今回はアナログ・レコーディングは行っていない?
デイヴ そう、今回はこれまで使ったことの無かったものをたくさん使用したよ。久々にAPPLE Logicも使うことになったけど、その能力に圧倒された。僕たちはバンドらしいサウンドにするのが好きだから、レコーディングの際にあまりいろいろといじくり回すことはしたくない。でも、デジタルによってサウンド面で増強できることがあるのなら、今回はそれを追求しようと思ったんだ。ここ10年間のデジタルのトレンドは、パフォーマンスを思い切りいじくることだったけど、僕たちは自らのパフォーマンスの一貫性の無さを気に入っている(笑)。人間らしい要素が好きなんだ。アナログ機材を使っていたときは、その人間らしい要素がモロに出たんで、何かを変えるという選択の余地は無かった。今回のアルバムでも基本的な姿勢は同じなんだけど、ダレル(ソープ)とグレッグ(カースティン)と一緒に、これまで使ったことのなかった手法を用いたんだ。エキサイティングですごく良かったよ。
ーデジタル・レコーディングとはいえ、サウンドはとてもオーガニックに聴こえますね。
テイラー それは、パフォーマンスの大半をオーガニックなままにしたからだよ。みんなのアルバムがデジタルっぽくなる原因はそこにあると思う。ドラム・トラックを録音して、ありとあらゆる矛盾を修正してしまうと、リズム・マシンのようになってしまう。でも、このアルバムではそういうことはほとんどしなかった。
ー実際のところ、デジタルとアナログ、どちらのサウンドが好みですか?
デイヴ 面白いことに、サウンド面でいろいろとテストをしてみたんだ。アナログ対AVID Pro ToolsやLogicで大きな変化があるかどうか調べたかったんだよ。そして違いが認められたら、テープに録音して、必要だったらそっちに移行しようと思っていた。でもね、アナログ対デジタルのサウンドの差はあまりにもわずかで、僕でさえ感知できないことがあった。ダレルやグレッグの方を向いて、"どっちがどっちだか分からないよ。君たちはどっちがいいと思った?"と聞いたりした(笑)。だからそこのところは、彼らの直感と知識に頼ることが多かったね。でも僕にとってアナログの最大の特徴は、必ずしもサウンドじゃない。真のパフォーマンスをとらえて、人間の要素をそのままにしておけることだよ。24trのテープ・マシンを使ってレコーディングしたサウンドが好きかって? もちろん! 箱からリールを取り出して、マシンに取り付けるのが好きかって? ああ、イカしてるじゃないか! すごいよ。アナログ盤を聴くのが好きかって? もちろんだとも! 手に取って感じられるところがいいんだ。でも、僕が手掛けた映画『サウンド・シティ - リアル・トゥ・リール』(編註:2013年のデイヴ・グロール監督作品。閉鎖されたLAの伝説的スタジオ=サウンド・シティへの敬意と、同スタジオのNEVEコンソールへの愛情がつづられている)でトレント・レズナーが映画の最後に出てきたのは、彼が両方をきちんと理解しているからなんだよ。レコーディングを敢行する上でデジタルにするかアナログにするかというのは、この2つをどう使うか、どう共存させるかということだ。オープンな気持ちで、どちらにするか決めるんだ。そしてこのバンドは、最終的にはフー・ファイターズらしくないといけない。だから僕は、そんなにひどく変えたくない。録音ボタンを押したら、僕たちらしいサウンドにならないといけないんだ。
ーテイラーはいかがですか?
テイラー デジタル対アナログの議論となったら、テープのサウンドが大好きだ。ただ、今回は幅を広げられたことは間違いない。俺は、正直な音のレコーディングが好きなんだ。人間が行っているパフォーマンスが好きだし、過剰な処理や修正は好きじゃない。俺たちは、この2つのバランスを取ることに成功したと思う。AVID Pro Toolsを使ったようなアルバムには聴こえないけど、コンピューターを使ったことは間違いないんだ。
(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号にて!)
品種 | 雑誌 |
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仕様 | B5変形判 / 332ページ / CD付き |
発売日 | 2017.09.25 |