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2017.10.06

サンレコ的ナッシュビルの歩き方【特集】「アメリカ音楽の聖地」ナッシュビル・スタジオ最新事情①|サウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号より

Text by Yoshihiko Kawai,Illustration by Chihiro Yaegashi

ロサンゼルス、ニューヨークと並んでアメリカの音楽産業を支えている音楽都市、ナッシュビル。1950年代からカントリー・ミュージックの本拠地として有名で、数多くのミュージシャンを輩出し、さまざまな作品がレコーディングされてきた。現在も多くのレコーディング・スタジオが存在し、そこでは、カントリー・ミュージックだけでなく、ポップス、ロック、ヒップホップ、R&B、ジャズ、劇伴など、ジャンルを選ばず作品が生み出されているという。そのナッシュビルのスタジオを探ってくるよう編集長から一任された、サンレコ編集部河合が、東京から10,000km以上離れたこの音楽都市を訪れ、さまざまなスタジオを訪問。豊富な写真と貴重なインタビューとともに、ナッシュビル・スタジオの最新事情をお届けしていく。

多くのスタジオが集中する都市

 ナッシュビルに行こう!といろいろ調べてみると、日本 からはなかなかすんなり行ける場所ではないことに気付 く。まず直行便がないので、アメリカのどこかの都市を経 由する必要があること。それ自体は、旅慣れている人には 大したことではないが、筆者はトランジットでは良い思い 出がない......。そんな一抹の不安を抱えながらも、事前 にさまざまな情報を集めた。

 アメリカ南部に位置するナッシュビルは、テネシー州の 州都である。そしてカントリー・ミュージックの拠点である ことがまず情報として入ってくる。お隣のメンフィスがブ ルース、さらに南に行ったニューオーリンズがジャズと、 アメリカには都市によって音楽ジャンルの発展する土壌 があるのだろう(シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノ、LA メタルもありますしね)。ちなみにナッシュビル国際空港 に到着すると、空港内でランダムにさまざまなミュージ シャンによる歓迎のアナウンスを聴くことができる(筆者 がすぐに分かったのはスティーブン・タイラーであった)。


▲ナッシュビル国際空港に着くと、ジョニー・キャッシュがお出迎え。空港内にはミュージシャンからのウェルカム・メッセージも放送されている

 さて今回は、実際に取材するにあたって、コーディネーターを介し、さまざまなスタジオに取材のオファーをし た。RCAやSound Emporiumといった歴史的建造物のスタジオから、Ocean Way、Blackbirdなどの大型ス タジオまで、オファーだけなら20に迫る数だった。その中から、滞在中にスケジュールが合うスタジオを片っ端から取材してきたわけだ。血のにじむような足取りは、トッ プ・ページに示したスタジオ数を見ていただきたい(実際は車移動で、場所も集中していたのですが)


▲数多くのライブ・ハウスがブロードウェイの両脇に建ち並んでいる。夜は特に人があふれかえっており、思い思いに音楽やお酒を楽しんでいた


音楽都市と呼ばれるゆえん

もし本特集を読んで実際にナッシュビルを訪れたいと思っても、我々取材班のように幾つものスタジオに入るのは難しいだろう。録音/ミックスのセッションを行うなら、 1つのスタジオに絞ると思う。そうなったら、ナッシュビル の音楽に触れる場所にも訪れたい。まずはブロードウェ イ。道の両脇にカントリー・ミュージックを中心に演奏さ れるライブ・ハウスが建ち並んでおり、昼間からビールを飲みながらその演奏を楽しむことができる(今回はそんなことしていませんよ!)。さらに市内にはジャンルを問わず演奏されるライブ・ハウスも数多くあり、例えばマデオン も公演を行ったことがあるという。また、カントリー・ミュージック殿堂博物館やジョニー・キャッシュ博物館、ライマン公会堂、ベルコート・シアターなど、まさに音楽都市の名にふさわしく、見どころも多くある。サンレコ読者なら、ミュージック・シティ・センターでSummer NAMM が開催されていることや、GIBSONの本社があることも 知っているかもしれない。音楽には関係ないが、フットボ ールのテネシー・タイタンズやホッケーのナッシュビル・プレデターズも、そのホーム・スタジアムがある。


▲ブロードウェイ近くにあるカントリー・ミュージック殿堂博物館。カントリー・ミュージックのミュージシャンの生い立ちや楽器などを豊富に展示


 今回の取材の前は、ナッシュビルはカントリー・ミュー ジックに固執した都市なのでは?という疑問があった。確かに今でもカントリー・ミュージックは産業の中心にあるようだが、近年は人口の流入も多く、それに伴い音楽ジャンルもどんどん多岐にわたっているということだ。日本からもカントリーだけでなくポップスや劇伴などの作品を制 作するために訪れたり、オンライン・ミックスやリモート・ レコーディングを依頼することもあるそう。その理由については、以降の記事を読んでいくことで理解してもらえる はずだ。さて、イントロダクションはこの辺りにして、早速ナッシュビルのさまざまな個性あふれるスタジオたちを体感していただこう。

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号にて!)


品種雑誌
仕様B5変形判 / 332ページ / CD付き
発売日2017.09.25