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対談:映画音楽制作の「今」〜横山克×本間昭光|キーボード・マガジン2017年10月号AUTUMNより
Text by Rie Abe
特集『映画音楽の技法』の特別対談として、『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェズ』や『ちはやふる』でも知られる当代きっての人気音楽作家・横山克を迎え、本誌でもお馴染みの音楽プロデューサーであり、映像音楽への造詣も深い本間昭光と現代映画音楽における作曲法などについて語っていただいた。最先端の生の現場とは? 必要とされるスキルとは? 横山のプライベート・スタジオに本間が訪問する形で対談は始まった。
"アイディアを作品ごとに出していく、それを音楽に昇華させることが大事"
本間 僕は映画音楽については素人みたいなものだから、今日はいろいろ質問してみたいなって。映画音楽って経験値だと思うし、横山さんはそれだけでは越えられない壁をドンドン越えてきている印象があります。映画音楽の作曲方法の基本には何があるのか、そこを一番に聞きたいですね。
横山 映画音楽をやる人は世の中にたくさんいるので、ただ、いい曲を書くだけでは絶対に不十分だと思っているんですよ。日本では良いメロディを書いてくださいというオーダーが一番多いと思うんですが、それに自分が甘んじてしまうことが怖いんです。僕は映画音楽を作る上で一番大事なのはアイディアだと思っているんですね。ハンス・ジマーが大好きなんですけど、彼の仕事を見ているとやっぱり今の時代はアイディアなんだなって。良いメロディを作るというのは絶対条件であって、それ以上に、監督とかを頷かせるようなアイディアを作品ごとに出していく。で、それを良い音楽に昇華させることが一番大事なことだと思っています。
本間 なるほど。やはりたくさん越えてきたからこそ出てくる答えですね。僕が、最初に映画音楽で驚いたのは『ジョーズ』なんですよ。実際にはサメが近寄ってきているのか分からないんだけど、音楽で緊張感が高まっていく。あの感じとかはまさにアイディアですよね。で、その後に『スターウォーズ』なんだけど、あれほどシンフォニックでしかもオリジナルのものって今までにはなかった。そういう意味で、あの時代においては発明だったのかなって。でも今ではそれが普通になっちゃっている。現在では、確かにハンス・ジマーの音楽って毎回印象に残るんですよね。
横山 さまざまな国で活動されるコンポーザーが、もし『スターウォーズ』みたいなオーケストレーションを今の時代にやったら、100%クビになるって言っているんですよ。もう古いからって。でも日本ではまだそれを出してもいいくらいの感じがある。
本間 やっぱり向こうは先を行っているんですね。日本も今後はそうなっていくんでしょうか。
横山 "良いメロディを書いてください"というオーダーのとらえ方を変えるべきで、それはありきとして、加えてコンポーザーがアイディアを出して監督を乗せていくっていうか。
本間 僕の場合はポップス・フィールドで曲を書いていることが多いから、映画音楽においては逆にメロが強過ぎるって言われるんですよ。良いメロってひとくくりでいうけど種類が違う。アニメと実写でも全然違うし。そのさじ加減っていうのがやっぱりセンスとして問われる時代であって、アイディアなんでしょうね。ところで、『インターステラー』の音楽をどう思いますか?
横山 死ぬほど研究しましたよ。
本間 僕も何十回見たか分からないぐらい。やっぱり、音楽がじわーってくるのね。宇宙の海原でこんなにも音楽が叙情的で......パイプ・オルガンやピアノの使い方もそうだけど、ハンス・ジマー1人が考えたのか、あるいは誰かほかにアイディアを出してくれるミュージカル・ディレクターがいるのかな?と。
横山 パイプ・オルガンを使うアイディアはハンス・ジマーが考えたみたいですよ。そういうアイディアを考えるのが本当にうまい。ジマーと監督のクリストファー・ノーランはスクリプトをお互いに共有して意見を出し合っているそうなんです。で、パイプ・オルガンを思い付いたらサンプリングしに行く。ジマーのリモート・コントロール・スタジオに行ったことがあるんですが、そこで常にサンプリングして、自分専用のライブラリーを作っているようでした。
本間 ハンス・ジマー・シリーズみたいなライブラリーが、スピットファイア・オーディオからたくさん出ていますよね。買ってはみるけど......。
横山 僕も確かに使ったりするんですけど、ただ使う以上は彼に追いつけない。だから自分でライブラリーを作って、音色に対してもっと追及しないといけないなと思います。
(続きはキーボード・マガジン 2017年10月号 AUTUMNにて!)
キーボード・マガジン 2017年10月号 AUTUMN
品種 | 雑誌 |
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仕様 | A4変形判 / 180ページ / CD付き |
発売日 | 2017.09.08 |