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【Interview】ゼッド|サウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号より
Text by Paul Tingen Translation by Peter Kato Photo by Reuben Wu
EDMブームをけん引してきたアーティストの一人、ゼッド。多くのEDMソングがあふれかえる中、派手なサウンドだけでなくクラシック音楽の要素を取り入れるなど、そのメロディアスなソング・ライティングのセンスが評価されているプロデューサーだ。2012年に1stアルバム『クラリティ』、2015年に2ndアルバム『トゥルー・カラーズ』を発売。自身の作品以外でも、ジャスティン・ビーバーやレディー・ガガの楽曲プロデュース、アリアナ・グランデやヘイリー・スタインフェルドの曲へのゲスト参加など、ポップス界でも活躍し続けている。今回、ゼッド本人に音楽の原体験、エレクトロニック・ミュージックとの出会い、自身の制作アプローチについて語ってもらった。自宅に作られたプライベート・スタジオの写真も掲載しているので、じっくり読み進めてほしい。
ジャスティスの『†(クロス)』を聴いて
プロデュース・ワークをしてみたいと思った
「今の僕はもっと音楽性を追求した、より高度な曲作りに関心を持つようになった。誰もが楽しめる音楽で、もちろん作っている僕自身も退屈せず、音楽フェスでしか通用しないようなものではない、音楽性に優れた曲作りだ。例えば「クラリティ」。僕はあの曲を5年ほど毎日のように演奏しているが、いまだに刺激を受け続けている」
以上は、ゼッドことアントン・ザスラフスキーの言葉だ。そして「クラリティ」とは、イギリス人シンガーのフォクシーズをボーカルに起用した、ゼッド初の大ヒット曲のことである。2012年にリリースされたこの曲は、全世界で約300万セールス、YouTubeの動画再生回数2億回以上を記録し、ゼッドにグラミーの最優秀ダンス・レコーディング賞をもたらした。しかし「クラリティ」はザスラフスキーが収めた最も大きな成功ではない。この「クラリティ」を超える大きな成功を収めたアーティストであるからこそ、ザスラフスキーの言葉には耳を傾けるべき重みがある。ザスラフスキーは、EDMに対してほかのアーティストの多くとは異なる角度から取り組んでおり、それが自身のアーティストとしての存在理由になっていると考えている。実際、クラシック音楽やジョージ・ベンソン、ザ・ビートルズ、ディープ・パープル、キング・クリムゾンをEDMと同列で称賛するEDMアーティストは、恐らくザスラフスキー以外に居ないだろう。
ザスラフスキーの好む音楽が多様な理由は、その生い立ちにある。1990年代から2000年代にかけてドイツで育ったザスラフスキーは、ギタリストの父とピアノ教師の母を持つ。「両親からピアノの弾き方を教わり始めたのは、3歳か4歳のころだった」とザスラフスキーが記憶をたどる。
「ピアノでは主にクラシック系の曲ばかり弾いていたが、少し大きくなるとフロッピー・ディスクにデータを保存できる12trレコーダー内蔵のキーボードを与えられて、それで作曲するようになった。毎日のように曲を作っては父に聴かせ、感想を求めていたね。12歳になったころ、クラシックはもうたくさんって気分になり、兄とともにDioramicってバンドに参加し、そこでドラムをたたき始めたんだ。最初はミューズっぽい音楽を演奏していたが、その後ジャズ・ロック、さらにはオルタナティブ・ロック、メタル、ハードコアと、時がたつとともに過激なスタイルの音楽へと傾いていった。そのころジャスティスの『†(クロス)』というアルバムを誰かに教えてもらったんだ。その音楽を耳にして、僕は一発でジャスティスのとりこになった。とにかくプロデュース・ワークが素晴らしく、ミックスも信じられないほど良いと思ったんだ。そしてこうしたプロデュース・ワークを自分でもしてみたいと思い、どのようにすれば良いか試行錯誤し始めたよ」
昨今は、チャートにランク・インする曲を生み出せたとしても、人気が続かないアーティストも多い。しかしゼッドはそうしたアーティストとは異なり、チャート上位の常連となるだけの実力がある。これは、ザスラフスキーに音楽的スキルと自信を植え付けた両親の存在と無関係ではないだろう。ちなみにロシア人の両親とともにロシアからドイツへと移り住み、ドイツ南西部のカイザースラウテルンで育ったザスラフスキーは、自身のことをドイツ人だと認識している。「僕はドイツのパスポートしか持っていないし、幼いころの記憶はすべてドイツに関するものだからね」とは本人の弁である。
(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年12月号にて!)
サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号
品種 | 雑誌 |
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仕様 | B5変形判 / 276ページ |
発売日 | 2017.10.25 |