PICK UP
実践!音を大きく聴かせる、宅録マスタリングの方法|サウンド&レコーディング・マガジン2018年4月号より
構成 by Tsuji. Taichi
一線で活躍するトラック・メイカーやエンジニアに登場していただき、彼らがそれぞれどのようにして自らのサウンドを大きくしているのかレクチャーしてもらう。ここでは本誌掲載した多数のスゴ技の中から、Masayoshi Iimoriのテクニックを紹介しよう。
低域のぶつかりにフェードを描く
▲サブベースの頭に描くフェードは、キックのオーディオ波形が終わるタイミングまでがめど。両者が合わさって1つの低音楽器のように聴こえるのがゴールだ
▶▶▶ マスタリングの音上げを見越した処理
皆さんは、ご自身でマスタリングする際に"リミッターをかけると特定の部分がひずんでしまって、全体の音量が上げづらい"と、悩むことがありませんか? 僕も、自身の名義の楽曲については自らマスタリングをするので、似たような経験があります。
それを解決するために始めたのが、"キックと同じタイミングで鳴るサブベース(オーディオ)の頭にフェードを描く"という手法。キックとサブベースは共に低音楽器で、同様の帯域を担うため、同じタイミングで鳴らすとマスターのボリュームを食ってしまいます。その音量は中〜高域のパートよりも大きな場合が多く、リミッティング(もしくはマキシマイズ)しても全体をうまく均(な)らすことができず、結果としてキック+サブベースの個所がひずんでしまいがちです。
そこでフェードの登場。サブベースの頭にボリュームのフェード・インを描いてアタック(つまり最も音量が大きい個所)を抑えることで、マスターの音量を食わないようにしているんです。
フェードの長さは、キックのオーディオ波形が終わるところまでが目安。また"キックとサブベースが、あたかも1つの低音楽器に聴こえるよう描く"というのもポイントです。これができていないと、あまりかっこ良く聴こえません。
うまく描けたら、そのフェードをほかの個所のサブベースにも適用してみましょう。僕は普段ソフト・シンセでベースを作っていますが、一通り打ち込んだらオーディオ化してしまうため、こうした手法を採っています。同様の効果は、キックをトリガーとするサイド・チェイン・コンプによっても得られるものの、波形を見ながら作業できるこの手法の方が視認性に富んでいて好みですね。
Masayoshi Iimori
【Profile】1996年生まれのトラック・メイカー。トラップを中心とした楽曲制作で知られ、日本の気鋭レーベルTREKKIE TRAXから2015年にデビュー。その後、スクリレックス主宰のNEST HQやA-TRAKのFool's Goldなどからも作品をリリースする
(その他のテクニックはサウンド&レコーディング・マガジン2018年4月号にて!)
サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号
品種 | 雑誌 |
---|---|
仕様 | B5変形判 / 220ページ |
発売日 | 2018.2.24 |