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ZIGGY森重樹一インタビュー/ロック・バンドがチャートに入ることが考えられない時代|『A面に恋をして』より
text by 谷口由記
シングルの表題曲が"A面"と呼ばれた時代に生まれた名曲について、歌い手自らが振り返る書籍『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』から、貴重な証言の数々を抜粋してお届けするインタビュー。第1弾は、ZIGGYの森重樹一が語る「GLORIA」。
ZIGGY「GLORIA」
ZIGGY森重樹一が語る
「ロック・バンドがチャートに入ることが考えられない時代」
―編曲のクレジットがZIGGYになっていますけど、皆さんでイントロから作っていった感じですか?
「こういう曲だから」ってコードで教えて、ビートはこんな感じで、イントロはドンドンドンドンって、本当、そういう感じ。アレンジされているっていうようなものじゃないもん(笑)。ただ、バンドで楽器持って、ジャンジャンジャン!っていうだけの。それをアレンジというのであれば、それ以外にアレンジされた部分がないからアレンジというのかもしれないけど(笑)。でも、そういう曲ですよ。それくらい、作為のない曲。
むしろ自分のキャリアのなかで、ZIGGYの森重といえば「GLORIA」と思ってくださるような曲があって、それがそういう作為のないものであることが、すごく幸福なことだと思うんですよ。自分の名刺になるようなものが、もっと作為的に作り込んだものだったとしたら、僕はそれを払拭したり、さらにアレンジし直したりしていかなきゃいけないけど、自分の本質というか、楽器持ってジャンジャンジャン!っていうシンプルなもので自分の基本的な立ち位置を持たせてもらえたことは、すごくラッキーだなと思いますね。
―たしかに、若さあふれるストレートなロックンロール。
もうね、若さと経験のなさ、しかないですからね(笑)。
―そこに伝わりやすい部分がありますね。
この歳になったら両方とも買えないもんね。でも、このときメンバーからの反発もあって、対外的にもいろんな意味のわからないことを言われたりしたけど、そんななかでも当時のメンバーと一緒にやれたということは、とてもいい財産なんじゃないかなって思っていますけどね。
―バンド内の評価が分かれるところはあったかもしれないけど、森重さんは大ヒットする曲だというイメージはあったのですか?
(食い気味に)ない。ロック・バンドがヒット・チャートに入るなんてことは、前例がない時代だもん。ロック・バンドが「メジャーからレコード出せたんだよね」っていうのがすごく嬉しかった時代ですよ。だって、RCサクセションの忌野清志郎さんが、最初の武道館のライヴのあとに帰って銭湯に行っていたって話や、爆風スランプがデビューしたときは給料3万円しかもらっていなかったとか......誰もロックで食えると思ってないんだもん。
そう思ったら自分の状況だって「そんなもんじゃないの?」って思えたし。ハナっから、チャート云々なんてことを意識しなかったのが、もしかしたら、自分がここまで音楽をやってこられた理由かもしれない。だから、驚きこそしたけど......そんな感じでしたよ。
―ヒットしたことが。
そんなことがあるのかって。世のなかわかんねーなーなんて思いましたね。
―メンバーからの反発はあったけど、森重さんにとっては好きな世界観のひとつだった。
「ロックだからこうしなきゃいけない」というものが、自分の身なりや、生活っぷりみたいなところでは、もしかしたらあったかもしれないけど。こと音楽に関しては、僕は歌い手なので、やっぱり気持ちよく歌えるものを見つけていこうとしたときに、そこにバラードもあったし、生理的な抵抗感がなかったんですよね。
生理的に気持ちよかったからこういうものを書いたんだろうし、それは今でも自分の曲のなかにある。そういうポップス的なものは、要素として消えないというか、むしろそれがあることが好きなんだと思いますね。そこに、若いころは素直になれない部分があったかもしれないけど、今はもう、いいんじゃねって(笑)。
もりしげ・じゅいち●1963年東京都生まれ。1987年、ZIGGYのヴォーカリストとしてアルバム『ZIGGY ~ IN WITH THE TIMES~』でメジャー・デビュー。1995年からはソロでの活動も並行して行なう。ZIGGYとしての最新シングル「君の笑顔より美しい花を知らない」、ライヴDVD『LIVE 2017』(いずれもSPACE SHOWER MUSIC)を2018年4月25日に発売予定。 http://morishigejuichi.jp/
A面に恋をして 名曲誕生ストーリー
品種 | 書籍 |
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仕様 | 四六判 / 192ページ |
発売日 | 2018.03.16 |