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EPOインタビュー/夢のなかで聴こえたメロディ〜EPO流作曲術|『A面に恋をして』より
text by 谷口由記
シングルの表題曲が"A面"と呼ばれた時代に生まれた名曲について、歌い手自らが振り返る書籍『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』から、貴重な証言の数々を抜粋してお届けするインタビュー。第3弾は、EPOが語る「う、ふ、ふ、ふ、」。
EPO「う、ふ、ふ、ふ、」
夢のなかで聴こえたメロディ〜EPO流作曲術
―まずは、この曲を作ることになったきっかけから教えてください。
資生堂の「うふふふフォギー」という化粧品のCMのお話をいただいて、打ち合わせのときにコピーライターの方から、サビに「うふふふ」という言葉を入れてほしいというリクエストがあったんです。ものすごく悩んで、作るのに1ヵ月くらいかかったかな。全然ダメで。
―「うふふふ」という言葉は、けっこうなむちゃ振りですね。
ちょっと歌いにくい、歌にしにくいというか。でも、商品名だから入れなきゃいけない。女性が元気に社会進出し始めたころだったから、健康的で軽やかさがあって、前向きになれるようなものを、というリクエストがあったような気がします。
で、締め切りギリギリというときに、私、高熱を出しちゃったんですよね。寝込んでいるときに、夢のなかで歌がふっと流れてきて、朝起きてすぐ、カセットに録音したんです。
―夢のなかで出てきたフレーズはどこの部分ですか?
「うふふふ」というところから出てきました。アルバム(『ビタミンEPO』)のなかにメイキング・テープが入っていますけど、それはそのときに録音したものです。
―夢のなかでメロディが降りてくるんですね。
夢のなかだけで作ることは、ときどきありますね......ときどきというか、しょっちゅうあります。鈴木蘭々さんに書き下ろしたポンキッキーズの歌(「キミとボク」/1998年)もそうだったし。「う、ふ、ふ、ふ、」は、夢のなかでサビが出てきて、そこからAメロを作って。「うららかすぎる」という部分は春に向けたリリースだからですね。
―「うららかすぎる」という言葉もすごいですね。「うららかがすぎる」って(笑)。
ちょっと初夏の感じですよね。
―この歌詞の世界観は、オーダーに沿ったものだったんですね。EPOさんは、詞から先に作られるのですか?
私ね、詞先なんです。曲先は作れないことはないけど、やっぱり言葉があったほうが作りやすいかな。私はだいたい最初に歌のテーマを決めて、言葉とメロディを一緒に作っていく感じです。この曲もそう。
―歌詞は悩まないで作れるタイプなんでしょうか?
悩まないんですよ。自分から出てきたものに関しては本当に悩まない。ただ、この曲は特殊だったと思います。私、CM音楽のオーダーをよくいただくし、作るのも好きで、いつもならだいたい15分くらいでできちゃうんですけど、これは悩みました。
―15分で作れるものが、1ヵ月。たしかに長いですね。
CM曲だから、サビのキャッチーな部分ができないとスタートできないんです。すごくプレッシャーもあって、なかなかできなかった。
えぽ●1960年東京都生まれ。1980年、「DOWN TOWN」でデビュー。「土曜の夜はパラダイス」「恋はハイ・タッチ-ハイ・テック」などヒット曲多数。作曲家としても土岐麻子に提供した「Gift~あなたはマドンナ~」が大ヒット。最新ライヴCD+DVD『AQUANOME LIVE at Valley of GANGALA in Okinawa』(SPACE SHOWER MUSIC)が発売中。 http://www.eponica.net/
A面に恋をして 名曲誕生ストーリー
品種 | 書籍 |
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仕様 | 四六判 / 192ページ |
発売日 | 2018.03.16 |