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ダニー(ザ50回転ズ)インタビュー/最高傑作『ザ50回転ズ』全曲解説!
Text by 山本諒(ギター・マガジン編集部)Photo by 木場ヨシヒト、tommy
浪速のロックンロール・トリオ、ザ50回転ズの新作『ザ50回転ズ』。"うむ、セルフ・タイトルを冠したのも納得! これは最高傑作と言ってもいい内容だ!"そう意気込んだ編集部は、ギター・マガジン2018年4月号にてダニー(vo,g)にインタビューを敢行した。収録曲すべての音楽的モチーフやギター・プレイについて話を聞いた......のだが、取材テープは3時間を超え、誌面にはほんの一部分しか掲載できませんでした! というわけで、インタビューの続きを本ウェブにてたっぷりお送りしたい。アルバムの音源を聴かないとピンとこない話が多いかもしれないが、ダニーのとてつもない音楽愛がたっぷり伝わるはずだ。
マラカスひとつにしても、
ボ・ディドリーのうしろでやっている
ジェロム・グリーンのグルーヴ感ですよ。
---- 新作『ザ50回転ズ』の2曲目は「ハンバーガーヒル」(注:1曲目の「Vinyl Change The World」については本誌4月号を参照)。パブ・ロック風のAメロからメロディアスに展開するこの曲では、どんなバンドをイメージしたんでしょう?
歌が入るまではリフ一発なんですけど、ここは完璧にドクター・フィールグッドです。しかもライブ盤(『殺人病棟』)ですね。この曲は"不穏な感じ"がテーマで、中盤でアナログ・シンセの"ギョワーン"みたいな音をけっこう入れたんですよ。
---- けっこうエフェクティブな音ですよね。あそこもなにかモチーフが?
ネタバラシすると『狂い咲きサンダーロード』(80年)っていう映画の冒頭ですね。"ギョワーン!"っていうシンセが鳴るシーンがあって、"カッコいいな"とずっと思っていて。で、ザ・クラッシュじゃないですけど、ちょっとレゲエっぽい中盤セクションに不穏なシンセ音を入れました。
---- サビで一気にメジャーになりますが、裏メロでメロディアスな単音フレーズを弾いてますよね。個人的にはこの裏メロの"拍の取り方"に、真島昌利さんからの影響を感じました。
わかるわかる。"デーデーデ、デーデーデ"みたいな拍ですよね。うわあ〜、やっぱり知らず知らずのうちに影響受けてんねんなぁ......ブルーハーツは、僕の原点みたいなところもありますからね。そういえばこの曲ね、ほかの人に言われたんが、"ブルーハーツの「チェルノブイリ」と展開が似ている"と。ぜんっぜん気付いてなかったんですけどね。
---- 「Vinyl Change The World」でもブルーハーツの影響が見えますし、かなり大きな存在なんですね。次はポップで明るい「星になったふたり」ですが、冒頭はいわゆる"モータウン・ビート"です。
イントロはもう「You Can't Hurry Love(恋はあせらず)」(シュープリームス)です。んで、途中でボ・ディドリーのビートになりますね。裏でなってるマラカスも完璧に、ジェロム・グリーンですわ! ボ・ディドリーのうしろでやってるジェロム・グリーンのグルーヴ感ですよ。細っか〜い話やなぁ(笑)。
---- いや〜、こういう具体的な話は楽しいですよ〜。
ならええか(笑)。あとこの曲ね、ミックスの時に"ロックパイル(デイヴ・エドモンズやニック・ロウ擁するパブ・ロック界のスーパー・グループ)みたいにしようぜ"っていうことになって。デイヴ・エドモンズみたいにアコギの刻みを重ねたら、音が一気に決まりましたね。で、タイトルに"星"って入れてるから"キラキラさせとかな!"と思って、リッケンバッカーのハイポジで"シャリーン"っていうコードも入れてます。
---- メロディをなぞったギター・ソロが入りますが、少し不思議なサウンドですよね? 12弦ギターっぽい音のオクターブ・フレーズですが、12弦を使っても出ないニュアンスだな〜と思って。
このソロ、実は苦肉の策だったんです。ホンマはアコギだけで弾こうと思ったんですけど、この時使ってたヤマハのFG-170がもうネック反りすぎてて、ハイポジに行けなくて(笑)。それで、まずリッケンの単音で高いフレーズを弾いて、その1オクターブ下をアコギで弾いてますね。
---- なるほど〜。妙にかわいい音ですよね。
子供の危うさ、みたいなのも歌のテーマにあったので、ちょっとかわいらしいフレーズになってます。
---- ライブでどうなるか楽しみです。いや〜ライブ観に行きたい(笑)。
いや〜、ライブのリハせな(笑)。
---- 続く「新世界ブルース」は打って変わって、ド直球な歌謡曲です。イントロのファズの音が、また当時の邦楽っぽい感じで切ない(笑)。
ね! 90年代的な凶悪ファズじゃなくて、ちゃんと歌に寄り添うファズですよね。これは古いマエストロ(FZ-1S)です。ACE TONEもスタジオにあったんですけど、マエストロが絶妙でした。
---- Aメロのカッティング・ニュアンスがもう歌謡曲すぎて、本当に特徴つかんでますよね。
"ンッ、チャーラッ"っていうバッキングね。ここは、今流行りの16ビート・カッティングです! なんつって、このニュアンスは流行ってないっちゅうねん(笑)。
---- これ、インスパイアされた歌手などはいましたか?
60年代の黛ジュンですね。「恋のハレルヤ」とか「ブラック・ルーム」みたいな、ジャズ上がりの人たちがバック・バンドをやっている時代の"キャバレー歌謡"というかね。当時のジャズ系ミュージシャンって、アンプをドライブさせる発想がないんですよね。だからみんな、リードで急にファズ踏むんです。ああいうおもしろさをやってみたくかった。それでこの曲、ギターの見せ場がファズのリード・パートくらいしかない......ってのもおもろいでしょ? キャバレー・バンドってなんとなくそうじゃないですか。"ンッ、チャーラッ"ってバッキングを地味〜に弾いて、"前出てきていいよ"っていう時だけファズ踏んで出てきて、またすぐ大人しく伴奏に戻るっていう(笑)。
---- なるほど(笑)。山口百恵や沢田研二というよりは、60年代後半の歌謡曲に近い感じでしょうか。
そうそう。でね、さらにラッパ入れたら、"これこれ!これや!"って、全員爆笑しながらズッコケましたよ。あとは歌頭のヴィブラスラップね! これ入れな、もう収まりつかんってことで登場しましたね。
2ページ目:マーク・ボランっぽくやっても、全然エロティックなボーカルができない。ガラガラやし(笑)。
マーク・ボランっぽくやっても、
全然エロティックなボーカルができない。
ガラガラやし(笑)。
---- では次の曲「クレイジージジイ」ですね。
これはもう誰が聴いても......。
---- ハードロックですね(笑)。年代的にはどのあたりをイメージしてます?
73年のスウィート。
---- また具体的な(笑)。
スウィートか、もしくはスレイド。で、途中でテンポが速くなってからは、ディープ・パープル(笑)。で、このダブる感じのボーカルは、マーク・ボランですね。
---- (笑)。全員、奇しくもイギリスですね。
ああ、そうか。マーク・ボランって、オクターブ上と下のメロディを重ねて歌うじゃないですか。あれ、やっても全然サマにならなくて(笑)。ブースから流れてきた時にメンバーが、 "全然違う! 浪速のマーク・ボラン"って(笑)。
---- たしかに、ダニーさんの歌があんまりグラマラスじゃない(笑)。
そうそう、あんまりエロティックなボーカルができない。ガラガラやし(笑)。ほんならスージー・クアトロとかラモーンズみたいな感じで歌おうかな? っていう方針に変えたら、めちゃくちゃハマったんですけど。
---- ギターは明らかにハムバッカーですが、ダニーさん所有のギブソンSGですか?
SGと、テレキャスターですね。2本重ねてます。Aメロの "ッジャッ、ッジャッ"ってバッキング、あれもディープ・パープルね。ジョン・ロード(k)のニュアンスをギターでやってみました。
---- なるほど。それで個人的に気に入っているのが、ソロ前のリフ・パート。明らかにギター・ソロに入る前フリみたいな(笑)。
仰々しくていいでしょ?(笑)。"お前、それいるか?"みたいな。
---- "お前らの聴きたいギター・ソロ、そろそろ行っちゃうぜ......"という(笑)。ハードロックの素晴らしき様式美ですね。
そうそう。ちなみにこの仰々しいパート、ハードコアのバッド・ブレインズとかをちょっと意識したんですけど。で、ギター・ソロに行くとまたディープ・パープルに戻るという。
---- レコードでいうところのA面最後の位置に入っているのが「ちんぴら街道」。三味線の入った和風ロックで、アルバムでは明らかに異色の楽曲です。
和モノですね。ちょっとヤクザもんの、『緋牡丹博徒シリーズ』的な世界観です。三味線も長唄用のものを用意して、自分で弾きましたよ。でね、今回発見したんですけど、三味線のチューニングってめっちゃおもしろいんですよ。上からC-F-Cなんですけど、これを3本鳴らすとマイナーかメジャーかわかんないじゃないですか。で、昔の邦楽ってまさにマイナーかメジャーかわからんでしょ。
---- そうですね。「君が代」は長調か短調か?という議論もあります。
和音階やけど、どっちなん?って。「さくら さくら」とかもメジャーかマイナーかわからない。"これか!"と思って、興味深かったですね。ほんでギター・ソロも、今言った三味線の要領で、マイナーとメジャーを気にせんでええ2音(1&2弦の同フレット)で弾きました。
---- イメージした作品は『緋牡丹博徒シリーズ』のほかにもありますか?
梅宮辰夫さんの『不良番長』とかの世界観ですよね。股旅の凶状持ちが出てきて、"かまってくれるな、おっかさん......"みたいな(笑)。で、そういう和モノを下地にしつつ、ギターの"ズンズクズンズク"っていうブリッジ・ミュートはトイ・ドールズとか、ドクター・フィールグッドの「Roxette」的な洋楽のエッセンスですね。ここは自然と出ちゃいました。
3ページ目:カッコつけて"エディ・コクランや!"って言いたいんですけど、チェッカーズの影響ですね。
カッコつけて"エディ・コクランや!"
って言いたいんですけど、
チェッカーズの影響ですね。
---- 「ホテルカスバ」はウッドベースのスラップがカッコいいロカビリーですね。サウンド的には50〜60年代じゃなくて"ネオロカ"の時代ですかね?
ネオです。でも、しかもロバート・ゴードンとか、ストレイ・キャッツとかじゃない。あの......言っちゃえば、チェッカーズのロカビリーですよ。「俺たちのロカビリーナイト」的な。"日本人解釈でやったロカビリー"ですね。
---- なるほどなぁ。ちょっと歌謡曲のムードというか、"お水"な雰囲気がある曲ですしね。
だから、ストレイ・キャッツ的なトッポさもないし。サビとかもやや歌謡曲っぽいですよね。いや〜、チェッカーズ......もう、どんどん自分のルーツが(笑)。カッコつけて"エディ・コクランの影響や!"って言いたいんですけど、違いますわ。このサビの感じはマイナー歌謡でしょ。
---- とはいえ、ギター・サウンドはグレッチにエコーがかかったような、ザ・ロカビリー・サウンドですね。このへんの音作りはさすがです。
ええ、ちゃんとテープ・エコー(ローランドRE-201)使いましたから。ギターはグレッチと同じピックアップの載った、60年代のギルド(Starfire III)ですね。今回はビンテージの機材ばっか置いてるスタジオ(THE NEATBEATSのMR.PANが設立したGRAND-FROG STUDIO)だったんで、オーナーと相談して"こんな機材ないですか~?"、"あるで~"って(笑)。そこのスタジオがすごいのは、ドア・ストッパーがテープ・エコーなんですよ。"大丈夫すか?これ!"みたいな(笑)。
---- (笑)。
"こんな貴重なんいいんですか?"っていう(笑)。......あとこの曲、ギター的にはBメロでギャロッピングしています。ピックを右手の中にしまって、親指、人差し指、中指でやってますね。で、次のフレーズから"よいしょ!"ってピックを持ち直すという。
----このギャロッピング、普通にうまいところがダニーさんの隠れ名ギタリストっぷりを証明していますが、間奏後のCメロで使ってくるところがなんというか、心憎い(笑)。
イェーイ! うれしいなぁ。ちなみにここ、ダビングじゃなくて通しで弾いてるんですよ。そこは、自分たちに課したんです。
---- つまりパンチインとかせずに、一発で弾き通すという?
流れで絶対やろうと思って。録り直しないのが今回のテーマだったんで。だから重ねのフレーズは別として、基本的に一発で全部録ってます。
---- 続く8曲目はドリー(b)さんが歌う「デヴィッド・ボウイをきどって」。
はい。いきなりシンセから始まる曲ですね。
---- イントロは「Baba O'Riley」(ザ・フー)のオマージュですか?
はい正解! ザ・フーでした! でも、敬意を表して原曲は聴かなかったですよ。モロパクリになったら困るんで。でも、こんな音してますよね?「Baba O'Riley」って。
---- してますね。この曲って全体のイメージ的にも「Baba O'Riley」の出た70年代初頭あたりでしょうか?
そうそう、まさに。ハード化していくザ・フーですよね。そんでこの曲、「ハンバーガーヒル」みたいにBメロでまた裏メロを弾いてるんですよ。
---- たしかに。けど一般的に裏メロって、50回転ズみたいなトリオのギタリストはあまりやらないですよね?
そうなんですよ。でも、この曲はライブで、初めて裏メロだけでBメロ弾いたりしてるんですよ。ギターのコード・ストロークはポーンと抜けちゃうんですけど、これがけっこういいんです、演出効果的にも。僕ら、ライブのために作る曲やったら裏メロなんか思い付かないんですけど、"せっかくレコーディングなら裏メロつ〜くろ"と思って書くといいの浮かびますわ~。手前味噌ながら。
---- 裏メロ名人ってジョージ・ハリスンにしても真島さんにしても、"曲作って歌う人"が多い気がするんですよね。ダニーさんもその中に入るのかも?
いやいやいや、照れるな(笑)。
---- ちなみに裏メロがうまいギタリストって、ダニーさん的に誰だと思います?
誰かなぁ。俺、人の曲聴く時に裏メロを聴かないんですよね。だから、さっきマーシーさん(真島昌利)って指摘してくれたのが、正解じゃないですか。俺、ひょっとしてマーシーさんに一番影響受けてるんかな? 確かにギターを始めたきっかけが彼ってところも、ぶっちゃけあるし......。ことマーシーさんの裏メロに関しては、どことなく"歌謡感"があるじゃないですか。ブルースがルーツとおっしゃってるけど、マーシーさんって裏メロだけ聴いたら、すごいメロメロした感じで。ああ......多分、僕の裏メロはそこっすわ。うわー、バレた(笑)。
---- けどブルーハーツの裏メロって知らずのうちに口ずさんでたりしていて、なにげに最強だと思うんですよ。
うわ、そうか。。ブルーハーツの曲って、裏メロなかったらまったく別の曲に聴こえますよ、おそらく。なるほど、マーシーさんか......けっこう目からウロコですね。この「デヴィッド・ボウイをきどって」も、アタマは「Baba O'Riley」で入ってみたものの、蓋を開けたらブルーハーツだったという(笑)。
4ページ目:素直に、赤裸々に曲を作ると、自分が10代の時に触れてきた音楽のフレーバーになる。
素直に、赤裸々に曲を作ると、
自分が10代の時に触れてきた
音楽のフレーバーになる。
---- 次の「11時55分」以降から、より邦楽ロックのエッセンスが多くなってくる印象です。
ですよね。やっぱこのアルバム、ラモーンズとかザ・フーとかじゃなくて、僕が聴いてきた日本の音楽がデカいんですよね。
---- 「11時55分」はアルバム中でも1、2を争う美メロ・ナンバーです。純情なポップスというか。
「11時55分」のちょっと無垢な感じっていうのは、考えてみたら、NHKの『みんなのうた』じゃないかなと思って。イントロは「Mr. Tambourine Man」(ザ・バーズ)みたいに、切な〜いメロディをキラッとした単音フレーズで弾くイメージだったんですけど、全体的に言えばこの曲は『みんなのうた』やなと。すごくイノセントに、譜割りそのままに歌を歌うっていうか。
---- たしかに。ひとつのメロディにひとつの言葉が乗っていて、なんとなく童謡っぽいかもしれないです。
そうそう。童謡っぽいっていうか。で、おそらくフォークだと思うんですよね。吉田拓郎さんみたいな。
---- コード進行的にこだわったところはありますか?
この曲聴き返すと、ディミニッシュをけっこう使ってるんですよね。ここ5年ぐらいでようやく覚えたんですよ、ディミニッシュ(笑)。このアルバム全体でもディミニッシュばっかり使ってます。
---- 次、行きましょう。「純情学園一年生」。
はい。これはもう、80年代のアニメ・ソングのイメージですね。学園ものアニメのテーマソング的な。モロに80年代のシンセを入れてみたりして、もう誰も書こうとしないようなBメロを作ったりしました(笑)。このメロディ、洋楽でまずないでしょ? まあ、シンプルな曲でしたけど、コード進行だけはけっこう迷いました。
---- というと?
これね、転調して帰ってくる、転調して帰ってくるっていう構造なんですよ。"サビで転調すると、次のAメロで帰ってこれない!クソ〜!"みたいな感じで。それで短いパートを差し込んでみたり。ソロでキーが戻るんですけど、ソロ明けでまた変わるからチョーキングの"ウィーン"で帳尻合わせる、という(笑)。
---- こういう話って、普通にリスナーが聴いている限りだと気づかないですよね。曲作りする人ならではの苦悩が(笑)。
そうなんですよね〜。ここで報われて良かったですよ。
---- そしてアルバム終盤でひときわ輝くのが「あの日の空から」です。
俺が思うんは、エレファントカシマシの香りも若干あるなと思って。「俺たちの明日」みたいな。あとは、吉田拓郎さんかな。僕、エレキ・ギターに目覚める前はずっとフォーク・ギターを弾いてたんですよ。家にあったフォーク・ソングの歌本みたいなのをコピってたんです。でもある日、「今宵の月のように」がテレビから流れてきて。フジテレビの『月の輝く夜だから』ってドラマのテーマ・ソングだったと思うけど、一気にガーンと来たんですよ。テレビで初めてガンと来る音楽がエレカシだったんです。
---- なるほど。それをきっかけにフォークからロックのほうに行ったと?
そう、エレキ・ギターのほうに行ったんです。
---- で、この曲がまたブルーハーツ的なメロディ感がある気がするんです。
なんやブルーハーツばっかり出てきたな(笑)! いや、でも言われたらそうなんかな。この「あの日の空から」って、特に音楽性とか意識せずに出た曲なんですよ。曲も素直な、赤裸々な感じやし、だからこそ潜在的な影響が出てるんでしょうね。けどこうやって改めて聴くと、やっぱ自分が10代の時に触れてきた音楽のフレーバーですわ。
---- いよいよ最後の曲!「マチルダと旅を」はアイリッシュなフレーバーで、50回転ズらしい明るいパンク・ナンバーで大団円です。
これ、そもそもはオーストラリアの民謡なんですよね。「Waltzing Matilda」っていう曲のサビがもとになってて、AメロBメロは自分たちで勝手に作りました(笑)。サウンドはアイリッシュ・バンドじゃないですけど、ちょっとトラッドにバンジョーとかマンドリンを入れたりしましたね。まあ、これは"最後はにぎやかに終わろうぜ"っていう。「あの日の空から」で終わったら泣いてまいそうになるから(笑)。最後にやっぱり俺たちらしい曲で、元気よく帰ろうかなと。
---- 超高速ブリッジ・ミュートが出てきますが、簡単に弾いているようでかなり難しいですよね?
トイ・ドールズ的なね。速いぞ~(笑)。メロコアみたいに"ズクズクズクズク"じゃなくて、ちゃんと頭を意識しながら"ズンズクズンズク"ってやってるんですけど、みなさんも弾けると思いますよ。
---- こうして全体を聴いてダニーさんのルーツをひもといていくと、アルバムがどんどんひとつながりで聴こえてきますね。ダニーさんが数多のレコードを聴いて、人生を変えられていったありさまがそのまま曲になっていて、このアルバム自体がまさに1曲目「Vinyl Change The World」の歌の世界観だなと思って。
話してみて思ったのは、根底に歌謡曲とブルーハーツがあるっていう(笑)。照れる(笑)! やっぱ逃げられんな、ブルーハーツからは。マーシーさんの裏メロの呪縛もあったし。
---- 思ったより影響大きかったですね。
よく考えると、ザ・フーみたいな音楽を俺たちに伝えてくれたのは、間を取ってくれたブルーハーツがおってくれたからこそかもしれないですよね。いきなりザ・フーを聴いて、俺たちがすぐさまモッズ野郎になれたかっていうと、たぶんそうじゃない。80年代に活躍した日本の偉大な先人がおって、彼らがインタビューでザ・フーとかチャック・ベリーのことを言うてくれるんですわ。その当時、インタビューで影響を受けた音楽とかルーツを言っちゃうって、あんまりなかったと思うんですよ。本当、彼らに感謝ですよ。それが如実に出たのがこのアルバムってことですね。
◎ザ50回転ズのツアー日程はこちらをチェック!
ギター・マガジン 2018年4月号
品種 | 雑誌 |
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仕様 | A4変形判 / 258ページ |
発売日 | 2018.03.13 |