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2018.03.22

大橋純子インタビュー/「シルエット・ロマンス」を再び歌い出した理由|『A面に恋をして』より

text by 谷口由記

シングルの表題曲が"A面"と呼ばれた時代に生まれた名曲について、歌い手自らが振り返る書籍『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』から、貴重な証言の数々を抜粋してお届けするインタビュー。第6弾は、大橋純子が語る「シルエット・ロマンス」。

大橋純子「シルエット・ロマンス」

「シルエット・ロマンス」を再び歌い出した理由

―「たそがれマイ・ラブ」もそうですけど、この曲も大橋さんの代表曲として残ってきましたね。

 そうですね。でも、4年間の休業のあと、海外から日本に戻ってきて活動を再開したときは、「たそがれマイ・ラブ」も「シルエット・ロマンス」も歌っていないんです。封印していたんです。

―復帰したのに、歌わなかった。それはなぜ?

 自分としては、新生・大橋純子のスタートだという気持ちがあったんです。

―そのときは、バンドなのか、シンガーなのか、という葛藤は?

 AORの時代なので、バンドであろうが、ソロであろうが、昔と違って、あまり抵抗がなかったですね。とりあえず、新しいレコード会社と契約して、アルバムを1枚作って。ライヴもいろんなところから集めたミュージシャンでバンドを作って、新しいアルバムから選曲してやっていたと思う。

―ヒット曲を歌わなかった時期があったとはいえ、また、「たそがれマイ・ラブ」「シルエット・ロマンス」を歌い出すタイミングがありますよね。

 ありました。40代になってからですね。あるときポール・マッカートニーの日本公演を観に行ったんです。てっきりビートルズ時代の曲は歌わないと思っていたら、バンド・メンバーがはけて、アコースティック・ギター1本で突然「イエスタデイ」を歌い出したんです。
 「え? 歌うの?」って驚いたのと同時に、わかったんですね。ヒット曲の偉大さが。そこまでポールのファンでもなく、「イエスタデイ」がとくに好きなわけでもない私が、これほど感動する。それくらい人の心に沁みついている歌、これがヒット曲なんだって。それからです。また歌ってみようと思ったのは。
 そして、久しぶりに歌ったらわかったんです。最初に「たそがれマイ・ラブ」を聴いたときにヒットの予感があったのは、単純にこの歌が良い曲だからだって。メロディと歌詞のハマり具合。フレーズが歌い方を自然に引き出してくれるような、本当によくできている曲なんです。
 「シルエット・ロマンス」も、私が思っていた以上にロマンティックなポピュラー・ソングだった。お客さんも「やっと歌ってくれた」みたいな感じはありましたが、自分としても、やっと自信を持って歌えるようになった。で、あるとき気づいたの。「シルエット・ロマンス」の2番をステージで歌っているとき「この曲って、こんなに色っぽかったの?」って。

―えー? すごくセクシーな歌ですよ(笑)。

 「あなたのくちびる 首すじかすめ 私の声も かすれてた」って歌っているときに、すごく色っぽい歌だったんだって。随分経ってからだから、えつこさんに怒られそうだけど(笑)。そのことに気づいて、ステージで赤面しそうになって。封印を解いたときだから、42、43歳くらいかもしれませんね。もともと洋楽からきているから、英語の歌なら「I LOVE YOU」も「KISS ME」も普通に歌えるんですけど、日本語で「口づけ」とか「抱いて」というのは気恥ずかしくて。そういうのがあったから、あまりじっくり歌詞を見るタイプではなかったのかもしれませんね。

(続きは書籍『A面に恋をして』にて!)

おおはし・じゅんこ●1950年北海道生まれ。1974年「鍵はかえして」でデビュー。「たそがれマイ・ラブ」「サファリ・ナイト」などヒット曲多数。1982年、「シルエット・ロマンス」で日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞。2018年3月21日に『エッセンシャル・ベスト 1200 大橋純子』(ユニバーサル ミュージック)が発売。
http://junko-ohashi.com/


A面に恋をして 名曲誕生ストーリー

品種書籍
仕様四六判 / 192ページ
発売日2018.03.16