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【Interview】DEAN FUJIOKA×D.O.I.〜最先端を追い続ける2人の音楽観に迫る
Text by Yusuke Imai Photo by Hiroki Obara
フジテレビのドラマ『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』にて、すべてを奪われて復讐鬼となった主人公=柴門暖を熱演したDEAN FUJIOKA。フランスの名作である『モンテ・クリスト伯』をリメイクしたドラマ作品ということのみならず、主題歌をDEAN本人が手掛けたことも話題となった。しかし、この主題歌である「Echo」が注目されているのはドラマの影響だけではない。イギリス・ロンドンを中心に世界中に広まっている最新のベース・ミュージック"ウェイブ"のサウンドを取り入れて制作されたという点が、耳の早いリスナーたちに驚きを与えたのだ。その「Echo」のミックスを手掛けた本誌おなじみのエンジニア、D.O.I.氏とDEANの対談をお届けしよう。最新のベース・ミュージックを取り入れた楽曲を生み出すDEANと、毎号Engineers' Recommendにてカッティングエッジな作品を紹介してくれるD.O.I.氏。2人の持つ音楽観に迫るため、トレンドのサーチ方法から今作のキーワードであるウェイブ、そして現在の音楽界に多大な影響を与えているヒップホップ、トラップ、R&Bについて、存分に語ってもらった。
ーD.O.I.さんが初めてDEANさんの作品に携わったのはいつですか?
D.O.I. 大阪城ホールでのライブを収録したDVD『InterCycle 2016』のミックスが最初です。知り合いの方から"DEANさんって知っていますか?"と連絡が来て、急きょミックスを担当することになりました。
ーそのときにDEANさんの音楽活動面を初めて知った?
D.O.I. そうですね。もちろん俳優としての面は知っていたのですが、ライブの音源を全部聴いたときにびっくりしちゃいました。フューチャー・ベースやオルタナティブなインディー・ロック的な曲などもあり、"こんなに音楽性が高いのか!"と。前に一度、SNSか何かでたまたま見かけたんですが、"好きなラッパーは誰か"という質問に対して、DEANさんがMFドゥームって答えられていて驚いたんですよ。めちゃくちゃマニアックな人だなと(笑)。ヒップホップ好きでも、なかなかMFドゥームは出てこない。やはり日本というよりは海外の人に近い感覚を持っている人なんだなと感じましたね。ライブの音源を聴いたときにそれを思い出して、ヒップホップだけじゃなくて全ジャンルをいろいろと分かって制作されている方なんだと納得しました。
ーそのあと1st EP『Permanent Vacation / Unchained Melody』のミックスもD.O.I.さんが担当されていますね。
DEAN 『Cycle』はインドネシア、『History Maker』は日本とインドネシアで制作していて、全部日本で作るというのは『Permanent Vacation / Unchained Melody』が初めてだったんです。だから全く日本の音楽業界っていうものを分かっていなかったんですが、そんな自分でもD.O.I.さんの名前はいろいろなところで聞いていた。『Permanent Vacation / Unchained Melody』を一緒に制作したUTA君が普段からD.O.I.さんと仕事をしていて、自然とミックスをお願いすることになったんです。"やっとD.O.I.さんに会えるな"ってすごくわくわくしていたことを覚えていますね。
ー今回の「Echo」はUKの新しい音楽ジャンル、ウェイブに影響を受けて作られています。DEANさんはそういった音楽のトレンドをどのように追っていますか?
DEAN SoundCloudやSpotify、Apple Musicが多いですね。ドラマや映画の仕事をしているととにかく移動時間が多いので、その時間を使って常に新しいものを探しています。もしくはSpliceなどで音ネタだけをチェックしておく感じですね。D.O.I.さんはどうやってチェックされていますか?
D.O.I. 好きなアーティストがいたら、その名前でネット検索やSNSで調べたりすることが多くなりました。あとはSpotifyのプレイリストでチェックすることも最近は増えています。昔はGorilla vs BearやHype Machine、Pigeon & Planesなどの有名な音楽ブログ系を網羅して見ていて、今時はみんなやっていないかもしれないRSSリーダーも使って毎日チェックしていました。そこで目を付けたアーティストを検索すると、また趣向が近いアーティストが見つかって、そこからまた別のアーティストにつながったりする。でも、やっぱり情報力ではGoogleなどよりもSNSの方が上のような気がしてきましたね。情報が集まってくるところはどんどん変わってくるじゃないですか。結局ブログを更新する人もいなくなりつつあって、残っているところはちょっとビジネスっぽくなっている。"この曲が面白いから、パッとネットに上げて紹介する"というのは、SNSに移ってきていますね。
ーウェイブというジャンルはチェックされていましたか?
D.O.I. 実はウェイブっていうジャンルは認識していなくて、後から知ったんです。でもそういったジャンルのアーティストは聴いていて、「Echo」を聴いたときに"新しい系統だな"と理解できました。いつもジャンルを一番最後に認識するんですよね。
DEAN それ分かります。今回、曲を作っていたときは全くウェイブという名前は意識していなかったんですよ。作った後に、ウェイブのシーンを引っ張っているKarefulが聴いてくれて、"これはウェイブだ"って言ってくれたから、"あ、そうなんですね。ではありがたくジャンル名をちょうだいします"みたいな感じだった(笑)。
D.O.I. オルタナティブR&Bの一種だと思っていました。ちょっと荘厳で石造りのような感じがあるんだなと。
DEAN 確かにそうですよね。僕も最初そう思いました。宗教や教会といったイメージがありますね。
D.O.I. ネットが発達してから音楽ジャンルの細分化がより進んでいますよね。その細かい中にいろいろなレギュレーションがあったりして、それをエンジニアとして理解していることが大切。例えばEDMと言ってもたくさんあるじゃないですか。メルボルン系とか。"これはメルボルンだ"って分からないと、そのニュアンスを作れない。今のエンジニアは、各ジャンルのさらに細かいところまで理解する必要があると思いますね。普段からいろいろな音楽を聴いていないと、アーティストにイメージを説明されても、結局自分に引き出しが無い状態になってしまう。
(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2018年8月号にて!)
サウンド&レコーディング・マガジン 2018年8月号
品種 | 雑誌 |
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仕様 | B5変形判 / 244ページ |
発売日 | 2018.6.25 |