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2018.07.03

【Interview】チャットモンチー〜打ち込みにも挑戦したラスト・アルバム

Text by Kentaro Shinozaki Photo by Takashi Yashima

バンド・シーンに大きな影響を与えてきたチャットモンチー=橋本絵莉子(vo、g/写真右)&福岡晃子(b、ds/左)が、今年7月をもって活動を"完結"。6月27日にラスト・アルバム『誕生』をリリースする。とはいえ、これまでの集大成的なバンド・サウンドを期待していたら大きなショックを受けるだろう。"チャットモンチー・メカ"というテーマで福岡がプログラミングを担当し、打ち込みリズムやシンセを多用。最後まで変身し続けた彼女たちのレコーディングについて、ほとんどの録音&ミックスを担当したエンジニア佐藤宏明氏(molmol)とともに聞く。

打ち込み方が分からなくて
ポリシックスのハヤシさんに電話しまくった

ー打ち込みで作るきっかけは何だったのですか?

福岡 前作『共鳴』(2015年)でラップのような「ぜんぶカン」という曲を作ってみたときに、打ち込みもアリだなと思ったんですよ。生演奏と打ち込みを混ぜたいというか、打ち込みにフィジカルで勝ちたいというのがあって。なぜか最初は打ち込みと敵対していた(笑)。

ー打ち込みは主に福岡さんが担当しているわけですよね。

福岡 それまで打ち込んだことも全然無かったんですが、このアルバムを作る前に"チャットモンチー・メカ"という形で、打ち込みでツアーをすることになったんです。本当に何も分からなかったので、ポリシックスのハヤシさんに何度も電話して聞きました(笑)。

ー打ち込みで使用しているソフトは?

福岡 ABLETON Liveです。group_inouのimaiさんが"Liveを買おうと思っている"って言ってたんですよ。"じゃあ同じタイミングで使い始めたら一緒に勉強できるね"という話になって、私もAPPLE MacBookとLiveを買ったんです。

ー曲作りでLiveをどのように活用しているのですか?

福岡 やり方はいろいろで、先に打ち込んだものにえっちゃん(橋本)がメロディを乗せてくれる場合もあれば、えっちゃんが作ったメロディに打ち込みで音を当てることもありました。

ー橋本さんの曲作りはどのように行うのですか?

橋本 詞先です。それを元にギターを弾きながらメロディを作るんですけど、ギターで作ると打ち込みに合わないことも多いんです。そういうときはギターの音階をキーボードに直して弾くこともありました。やっぱりキーボードは熱量が伝わりづらいので打ち込みに合うんです。

ーキーボードは何を使っているのですか?

橋本 Juno-DSです。2台あって、1台はねごとに借りています(笑)。

佐藤 借り物でアルバムを作るというね(笑)。

福岡 ROLAND Juno-DSはストリングスとかホーンの音がすごく良いです。

ー橋本さんのシンセのアイディアは何かに録り溜めて福岡さんと共有するのですか?

橋本 いえ、直接その場で弾いてあっこちゃん(福岡)に聴かせるんです。

佐藤 全部手弾きなんですよ。衝撃的だったのは、そうやって手弾きしたシンセをあっこちゃんがLiveに録るんですけど、オーディオなんですよ。MIDIじゃなくて。だから変更があるときはえっちゃんがその都度弾き直すんです。

ーMIDIではなく、オーディオで録るのはなぜですか?

福岡 えっちゃんはフィジカル派で、思い付いたらすぐ録りたいタイプなんです。後でベロシティをいじったりクオンタイズもかけたりしない。最初からOKテイクを録るような感じですね。

ーオーディオI/Oは何を使っているのですか?

福岡 RME Babyfaceです。最初はよく分からなかったんですが、ほかのオーディオI/Oを使ってみてBabyfaceがレコーディングでもちゃんと使えるクオリティだということが分かりました。

ーソフト・シンセも何か導入したのですか?

福岡 作業の後半からですけど、NATIVE INSTRUMENTS Kompleteを買いました。いろんな人が"Kompleteを買わないと始まらない"って言っていたので。「CHATMONCHY MECHA」「びろうど」「裸足の街のスター」で使いました。

佐藤 打ち込み済みの音源をわざわざKompleteに差し替えたりしていましたね。

福岡 確かにKompleteの音はすごく良かったんです。

ーKompleteの音源には多くの選択肢がありますが、音色選びはすんなりと行きましたか?

福岡 もう感覚ですね。音源が無限にあるので最初はかなり悩んだんですが、えっちゃんに聴かせたときに"いいと思う"と言ってくれたことに勇気付けられて、それから考え過ぎないようになりました。

橋本 打ち込みって、生音では考えられないような音色が急に出てくるのが当たり前の世界なんですよね。むしろ、唐突に出てくる音が無いと飽きることも分かってきました。

福岡 バンドだったらイントロで使ったリフをアウトロで持ってきたり、同じ音をほかの部分で使ったりということがありますけど、打ち込みは全然違う世界ですよね。メイン・リフの音が変わっていってもみんなそこに執着しないとか、ビートがだんだん肉厚になっていくことが抑揚になったりとか、普通の生バンドとは違う盛り上げ方がある。バンドばかりやってきたので、そのアレンジに頭を切り替えるのはやっぱり大変でした。

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2018年8月号にて!)


サウンド&レコーディング・マガジン 2018年8月号

品種雑誌
仕様B5変形判 / 244ページ
発売日2018.6.25