内容
才能を潰すことなく、末長く創作活動を続けるためにできること
アーティストには付き物の、破天荒なエピソードや空気を読まない奇行、遅刻や細部への異常なこだわり......。周囲からは" 付き合いづらい"、" 理解しがたい"と思われるこうした現象は、実は彼らの単なるワガママではなく、自閉症スペクトラムを始めとした生来備え持っている個性的な特徴が現れているのかもしれない。また、彼らの周囲の人もちょっとした固定観念を持っているせいでお互いに理解し合えないのかもしれない。本書では、元バンドマンでマネージメントの経験もある専門学校の新人開発室室長と、現役精神科医師が、そのような観点から" 個性的すぎる才能"を活かす術を考えていく。アーティストとその周りの人間(家族やスタッフ、バンドメンバー)がお互いを分かり合えば、せっかくの才能を潰すことなく、末長くアーティスト生活を送れるはずなのだ!
【CONTENTS】
■はじめに 「生きづらさ」を抱えるアーティストたち
■第一章 「生きづらさ」の原因を探る
◎発達障害〜「自閉症スペクトラム」「ADHD(注意欠如多動性障害)」
「生きづらさ」を生み出す2つの特徴/発達障害の代表的な3タイプ/
自閉症スペクトラムと自閉症、アスペルガー症候群/「自閉症スペクトラム」に共通する特徴/
必ずしも医療が必要なわけではない/重要なのは苦手な分野/「世間話」が難しい理由/
ADHDに見られる3つの特徴/ADHDと自閉症スペクトラムの重なり合い
◎4つのタイプで考える
万能タイプとうつ病予備軍/自己愛タイプ/ADHDタイプ・自閉症スペクトラムタイプ
◎第一章のあとがき 個性的だからこそアートが生まれる
■第二章 音楽の現場でのトラブル・シューティング
◎時間を守れない--時間に対する感覚の違い
いっぱい喋る、もしくは全く話さない/時間の感覚ではなく、キリの良さで判断している/
事前に情報を入れておくのが大事/苦手なことを強要すると、本来の才能がスポイルされる
◎「こだわりの強さ」との付き合い方
「コミュ障」は医学用語か?/新しい提案を受け入れられない/
「新しいこと」が苦手? 100か0か?/約束には定期的に見直しの可能性があり得る
◎事前の説明が大事
「空気を読めない」ということ
◎苦手なことはやらない方向で考える
◎第二章のあとがき それは「わがまま」なのか
■第三章 多様性が音楽業界を救う
◎人口の10%は自閉症スペクトラム
友達なんか要らない?/すべての人が同じ社会の中で生活する=インクルージョン
◎ダイバーシティ(多様性)を担保するためにできること
音楽業界にもインクルージョンを/少数派の中の多数派と少数派
◎大切なのは「システム」よりも「人」と「作品」
◎叱られてもあまり学ばない「種族」
■COLUMN バックステージ・トーク 高階經啓
編集担当より一言
この本を読んで自閉症スペクトラムのことを知った人は、かなりの割合で「自分もそうなのかもしれない!」と感じるかもしれません。それくらい、『普通』と『自閉症スペクトラム』の境界はあいまいで、だからこそ『スペクトラム(スペクトル)』と呼ばれているんですね(医療が不要な人も多い)。
ちなみに、『人口の10%は自閉症スペクトラム』だと言われています。これは、左利きの人の割合とほぼ同じ。しかも音楽などのクリエイティブな仕事関係だと、その割合はもっと多いと推測されています。そういった状況なのに、既存の活動方法にのみこだわっていると、貴重な才能が潰されてしまう。そういった危機感から本書は生まれました。アーティスト本人はもちろん、その周りにいる人に読んでもらえると、風通しがすごく良くなると思います。(立東舎/山口)