立東舎

映画という《物体X》

フィルム・アーカイブの眼で見た映画

岡田 秀則(著)

定価1,980円 (本体1,800円+税10%)
発売日2016.09.23
品種書籍
仕様四六判 / 256ページ
ISBN9784845628636

内容

映画保存のエキスパートが明かす、《物質》面から捉えた映画の新しい魅惑

過去の文化遺産を保存・運用する「アーカイブ」。その仕事は現在ますます注目を集め、21世紀は「アーカイブの時代」とも呼べるでしょう。本書は、そのアーカイブを映画という分野で担ってきた著者による、「物質としての映画」にまつわるエッセイ集です。曰く、映画フィルムは牛からできている。映画フィルムは正しく救わないと爆発してしまう。映画フィルムはしばしば遠い旅に出てしまう。そんな不思議なお騒がせ者だけれど、フィルムの映画こそ未来に残すべき本物の「映画」なのです。
本書では、そんな映画の赤裸々な姿が、土地や歴史を縦横無尽に行き来しながら語られます。そして、映画アーカイブの基本思想は「すべての映画は平等である」。小津安二郎も成人映画も区別なく、7万本以上の映画が快適な環境で未来へ引き継がれてゆく映画アーカイブの収蔵庫は、そのような映画への新たな視座を生み出す場所でもあります。巻末には蓮實重彦氏との対談を収録!
カバー写真:中馬聰

<中条省平氏による推薦コメント>
岡田さんの著書は画期的な映画論で、私も楽しく読みながら、じつに多くのことを学ばせていただきました。
作品論でも作家論でもなく、理論書でも映像分析でもなく、さりとて、むろん産業論や社会心理学的エッセーではなく、ただし、歴史と技術については限りなく深い畏敬を捧げながら展開する「物質としての映画」論という新機軸!
映画についてこんな視角が可能であるとは思いもよりませんでした。
そして、岡田さんの真摯な情熱には私など到底及ばないと脱帽するほかなく、にもかかわらず、硬直した義務感とはまったく無縁に軽妙にくり広げられる筆致には、ニーチェのいう「陽気な知」があふれていて、随所で微笑まされました。
新しい映画スタイリストの誕生を心より寿ぎたいと思っております。

中条省平

<「映画本大賞」とは>
2017年で13回目を迎える「映画本大賞」は、映画雑誌『キネマ旬報』が、毎年、前年度に出版された映画に関する書籍の中からベスト・テンを選出するもので、選考人には批評家、映画評論家、記者、書店員、編集者など24名の映画の専門家が名をつらねています。

【CONTENTS】
■はじめに 生まれたからには、すべて映画は映画

■第一章 なぜ映画を守るのか
すべての映画は平等である
「映画を守ろう」と言ったのは誰?
日本では映画は保存しないようです、とアラン・レネは言った
映画が危険物だったころ
地域映像アーカイブの可能性
映画は牛からできている
映画館を知らない映画たち

■"私たち"の映画保存に向かって 対談:石原香絵

■第二章 フィルム・アーカイブの眼
映画は密航する
映画は二度生まれる
観たことのない映画に惚れた話
いまなぜ映画館が必要なのか
ジョナス・メカスの映画保存所に行った
寝た映画を起こそう
映画を分かち合うために

■私のシネマテーク修業日記 ノンフィルムの巻

■第三章 映画保存の周辺
小さな画面、大きな画面
ある映画館の100年 ノスタルジーを超えて
我らが「紙の映画」?チラシとパンフレット礼讃
映画はなくても映画史は立ち上がる
3D映画、敗北の歴史

■シネマテークの淫靡さをめぐって 対談:蓮實重彦