内容
本書は、フォーク・シンガーの高田渡がカメラを構え、撮影した作品を一冊にした写真集です。酒と音楽をこよなく愛した彼はツアーや旅先にも必ずカメラを持ち歩き、一時期は本気で写真家を志した時期があったと言います。
このたび、高田渡が遺した膨大な数のフィルムが見つかり、その1枚1枚をスキャンしたところ、若き日のはっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)や井上陽水、遠藤賢司、友部正人、坂本龍一、西岡たかし、泉谷しげる、中川イサト、中川五郎、はちみつぱい、三上寛、なぎら健壱、シバ、加川良、西岡恭蔵、武蔵野タンポポ団(以上、順不同)など、同時代を生きた仲間達の写真が多数発掘されました。緊張感漂うバックステージの様子、和気藹々としたオフショットは、まさに本邦初公開となる歴史的なカットばかりです。
また、1970年代当時に暮らしていた京都や吉祥寺、ツアーで巡った日本各地、パリやマドリッドなどのヨーロッパ旅行で撮影された何気ない写真は、まさに高田渡が歌にした世界観をそのまま写し出したかのよう。その1枚1枚が、社会の矛盾を鋭く、そして繊細に切り取った氏の歌と同じように奥深いものがあり、我々に何かを訴えかけてきます。
なお、本書の発売日となる2021年4月16日は、奇しくも高田渡氏の十七回忌(満16年)にあたります。自分が撮影した写真が一冊の作品として世に出ることはもちろん、このように写真集の中で昔の仲間と一堂に会することは、きっと本人も喜んでいるに違いありません。
写真の解説は、高田渡の長男であり、マルチ弦楽器奏者として様々なフィールドで活躍する高田漣が担当。稀代の詩人でもあった高田渡の視線の先にあった大事なものが、きっとこの写真集から伝わってくることでしょう。
1974年、遠藤賢司。一緒にまわったツアー先で。©️Takada Wataru
沖縄にて、移動中の友部正人。©️Takada Wataru
1974年の春一番コンサートより。なぎら健壱、他。©️Takada Wataru
1974年、ドイツ・ミュンヘン。©️Takada Wataru
1970年代の渋谷駅前。©️Takada Wataru
吉祥寺の井の頭公園にて。©️Takada Wataru
【CONTENTS】
1:友部正人と渡
2:1972ヨーロッパ(パリ、マドリッド、フランクフルト、コペンハーゲン、ストックホルム)
3:京都と人々(祭・実家)
4:1973韓国ソウル
5:仲間たち
6:沖縄
7:吉祥寺と人々
8:1974春一番コンサート
9:旅芸人の記録
10:スタジオ
11:1974ヨーロッパ(パリ、ミュンヘン、スイス、イタリア、エジプト)
12:駅
13:1975 JAMコンサート
14:1975『フィッシング・オン・サンデー』レコーディング@LA
15:年輪、歯車、街と人
16:ブランコ
主な登場予定人物(順不同):青木ともこ、あがた森魚、朝比奈尚行、ANNSAN、石田長生、伊藤銀次、泉谷しげる、いとうたかお、井上陽水、今井忍、遠藤賢司、大江田信、大瀧詠一、大塚まさじ、大庭珍太、加川良、かしぶち哲郎、金森幸介、キヨシ小林、洪栄龍、小林政広、佐久間順平、サスケ、坂庭省悟、坂本龍一、斉藤哲夫、佐藤GWAN博、佐藤博、佐藤B作、シバ、鈴木慶一、鈴木茂、武川雅寛、竹田裕美子、田中研二、ダッチャ、友部正人、永井洋、なぎら健壱、中川イサト、中川五郎、長野たかし、西岡恭蔵、西岡たかし、はっぴいえんど、はちみつぱい、林敏明、福岡風太、細野晴臣、本多信介、松田幸一、松本隆、三上寛、武蔵野タンポポ団、村上律、村瀬雅美、村瀬春樹、渡辺勝、和田博己、他。
編集担当より一言
2020年の1月頃、高田漣さんの取材をした際に“実は親父が撮影した写真のフィルムが大量に見つかったんですよ”という話を聞いたことがきっかけで、なぜか使命感にかられてこの写真集を制作することにしました。点数にして1万枚以上はあったと思われる写真を預かったものの、いわゆるネガ状態なので現像してみないとどんな写真かもわからないという状態。ちょうど緊急事態宣言で自宅作業が増えたこともあり、毎日1~2時間くらいずつ、コツコツコツと写真をデータ化していきました(途方もない作業でした)。
そこで出てきたのは、日本フォーク界隈のレジェンドたちの未発表写真の数々。はっぴいえんどや坂本龍一さん、井上陽水さん、遠藤賢司さんなどの若き日の姿は感慨深く、人誑しの渡さんだからこそ撮影できたのであろう貴重なオフショットが満載でした。
これらの写真の掲載許諾を取るために方々に連絡をとりましたが、ほとんどの皆さんが一つ返事でOKと快諾いただけたのも、渡さんの人柄あってのことだったと思います。そんなこんなで、ちょっとしたトラブルも乗り越えつつ、ようやくできあがった渾身の写真集。音楽と同じように、写真の良し悪しも人ぞれぞれだと思いますが、間違いなく高田渡さんの人間性が詰まった作品になっていると思います。あの素朴な世界観がお好きな方は、ぜひ手にとってお楽しみください。
(編集担当/坂口和樹)