内容
シティポップの名曲の数々を生み出したメロディメイカーが
自作曲をもとに解説する実践的作曲法!
1973年にシンガーソングライターとデビューし、以後は作曲家としても数々の作品を生み出してきた林哲司。
本書は、そんな林哲司が初心者にも優しくポップスの作り方を解説した実践的作曲法が満載です。「一から楽典を学ぶ必要はない」など、アカデミックな作曲法ではない身近な曲の作り方を紹介しているので、誰でも気軽に始められるのが大きな特徴となっています。
シティポップ再評価の著しい昨今ですが、「真夜中のドア〜stay with me」(松原みき)、「September」(竹内まりや)、「ふたりの夏物語」(杉山清貴&オメガトライブ)、「思い出のビーチクラブ」(稲垣潤一)の作曲者である著者が、自身の体験をもとに開示するリアルな作曲法は、きっと多くの人の参考になることでしょう。
フランクな語り口から繰り出されるヒントの数々をぜひ自分のものにして、音楽の世界を楽しんでください!
*本書は1999年刊『新ポップス作曲法』の改訂新版です。
CONTENTS
第1章 作曲のプロセス
1 曲のコンセプトを決め、核になるフレーズを作る
新しいモチーフを作るか、類似したモチーフをつなげるか
キーワードを具体的に分析する
歌詞が決まっている部分に曲を付ける
サビに施したちょっとした作為
核がなくちゃ、いい曲は書けない
8小節で成り立つフレーズ
サビを繰り返す
2 核を中心にして全体のメロディを構成する
コードの流れからメロディを導き出す
フレーズとフレーズをスムーズにつなぐ
Bブロックの繰り返しを避ける
サビの前にワンクッション置くための1ブロック
3 曲全体の構成を考える
曲には"起承転結"がある
2コーラス目のサビはリピートさせない
終わりに向かってサビを繰り返す
第2章 モチーフ作りからメロディ作りへ
1 どうやってモチーフを作るのか
僕らの頭の中には今まで聴いてきた音楽が蓄積されている
誰もがメロディ語を使えるはずだ
偶発的インスピレーションと意図的インスピレーション
2 作曲法の3つのタイプ
メロディ先行型
瞑想の中で作る
コード進行を念頭に置いて作る
特定のサウンドをイメージする
既成の曲をアレンジしていく
歌詞先行型
メロディと歌詞を同時進行させる方法
曲を作るためにルールは経験的に知っているもの
3 インスピレーションを得るためのさまざまな方法
メロディ先行型の場合
「空歌」を発展させる
好きな曲の真似をして作ってみる
CMソングのつもりで自由なメロディを付ける
レコーダーやシーケンサー/DAWを使う
無意識下の作業を形にする
日記のように毎日メロディを書き記していく
歌詞先行型の場合
でたらめな英文を使って適当なフレーズを口ずさむ
日本語による歌詞先行型ならではの面白さ
4 モチーフの形を整える
詞の長さを考慮して符割を調節する
拍子について......4分の4がスタンダード
ナチュラルに聴こえるビート感を大切に
メジャーとマイナー
マイナー感/メジャー感に濃淡を付けるテンションコード
途中でメジャー/マイナーが入れ替わる
メロディは自由な音に飛んでいい
ボーカルの音域〜自然に歌える範囲内の音域を使うこと
第3章 モチーフを発展させる
1 曲の成り立ち
ポップスの絶対条件は「誰もがわかりやすい曲を書くこと」
モチーフ
モチーフの長さ
最小のモチーフを発展させる
小楽節
大楽節
サビ
2 モチーフから曲を作るプロセス
どのモチーフから作り始めるか?
メロディにコードを付ける
最初に決めたリズムをキープする
3 新しいモチーフの導き出し方
1つのモチーフを繰り返しながら、コードを変えていく
新しいメロディを次々に展開させていく
新しいモチーフを作るか、類似したモチーフをつなげるか
特定のサウンド/楽器をイメージして作る
コード進行から新しいモチーフを導き出す
さまざまな曲をコピーしてコードに対するセンスを磨く
ルールに縛られず、自分の感性を大事に
第4章 コードについて
1 コードの仕組みについて
現代のコード観
メジャーとマイナー
主要三和音とその機能
6th/7thのコード
代理コードの存在
2 コード進行について
コードの性質に導かれてコードの流れが作り出される
メロディとコードの関係
3 ポップスでよく使われるコード進行
最も代表的なコード進行、循環コード
メロディの強調にもってこいの2度進行
流麗な響きの5度進行
ぜひチャレンジしてほしい半音進行
コード進行の組み合わせ
コードチェンジのタイミング
4 コード進行からメロディを導き出す
1つのコード進行にはいろいろなメロディが当てはめられる
主要三和音だけでも曲は作れる
循環コードから数々の名曲が生まれた
5 平凡なコード進行に変化を与えるテクニック
サブドミナントでどんな代理コードを使うか
和音構成を膨らませる
いろいろな音楽をたくさん聴いて、アイデアを蓄えておくこと
コードを展開させるときに、ルールはない
第5章 曲の構成を考える
1 起承転結
サビ=「転」を中心に起承転結を構成する
モチーフの位置感を考える
「転」から始まる曲があってもいい
2 モチーフとモチーフをつなぐテクニック
音楽の三要素
メロディの流れがスムーズでなければならない
ブロックの繰り返し
リピートの具体的処理
サビをスムーズに導くフレーズはあるはずだ
高くて長い音をサビ前に使うのが一般的
3 大楽節を組み合わせるときの注意事項
1コーラスにはどのくらいの大楽節が必要か
全体の長さを考えながら小節の数を調節する
大楽節の組み合わせ方のルール
1曲の長さはどのくらいが適当か
いろいろなモチーフが次々と出てきてもいい
第6章 テーマを設定して曲を作る
1 シングルヒットを目指す
背景......シングルヒットを前提に作られた曲
覚えやすい曲であること
「セプテンバー」という言葉をサビに使うこと
シンガーの音域を最大限に生かし切ること
アレンジを想定する
曲作り......60年代アメリカンポップスの雰囲気を取り入れる
アメリカンポップスのセオリーを踏襲する
セオリーばかりの曲作りがいいとは限らない
コードの刻みで曲を引き締める
アレンジ......素直なメロディなので、作為の部分を作る
イントロは曲のシンボル
転調
リズムチェンジ
曲の終わりに向かってのアテンション作り
コーラスアレンジもこの曲のポイントの1つ
カッチリ計算されたアレンジをするか、プレイヤーのセンスを生かすか
ポイント......アレンジ段階で曲はいくらでも変化する
2 洋楽の雰囲気を取り入れた曲作り
背景......洋楽志向の曲が歌手の声質によってドメスティックに
曲作り......メジャーの中のマイナー感を意識
下行するベース音で哀愁感を出す
Aブロック、Bブロックを対照的にして曲の展開を生かす
できるだけたくさんのコード進行をしっておくといい
ポイント......際立たせる部分と抑える部分のバランスが重要
3 アレンジを想定した曲作り
背景......CMタイアップを前提としたミディアムナンバー
曲作り......ギターリフが印象的な曲にしたい
リフが取る音とメロディが取る音のバランスを考えること
前後のブロックとのバランスを考えたBブロック
サビのインパクトがCMタイアップ曲のポイント
アレンジ......ギター/ベースとメロディの絡みをうまく引き出す
印象に残るリフを作る方法は?
アレンジをイメージするには?
4 アーティストを想定した曲作り〜男性ボーカルの場合
背景......アーティストの懐の深さを利用した"アンバランスの美"
背景となるものを踏まえつつ、それを裏切るような意識
ソウルフルな歌い方と甲高いハスキーボイスに着目
アルバムの核になる曲作りを目指した
曲作り......各ブロックをバランスよく配置
フェイクするボーカルの感覚を生かしたメロディ作り
同じようなモチーフの繰り返しで曲を構成
展開部のコード使いにひと工夫
A'的なメロディに戻って終止させる
ポイント......バラードを作曲するコツ
朗々と歌い上げる曲がバラードという認識は誤り
バラードのコード感には2種類のものがある
アーティストの志向性もバラードの局長に影響する
メロディが大きくなり過ぎないように!
予想外の要素が思わぬヒットを生むこともある
5 アーティストを想定した曲作り〜女性ボーカルの場合
背景......ユーミンの肉声をイメージしながら書いた曲
曲作り......シンメトリーを多用したカッチリした曲作り
シンメトリーを多用するとコード進行の比重が大きくなる
サビ前にひと呼吸置いて気分転換を図る
誰かになりきって曲を作ると、新しい世界が開ける
シンプルで人の心に染みる曲を作るのは難しい
ポイント......ボーカリストのキャラクターをよく知ろう
6 アーティストを想定した曲作り〜アイドルの場合
背景......過渡期の女性ボーカリストへ提供した曲
曲作り......王道のメロディ
適当な英語のフレーズを使って最初のメロディを作る
王道を歩くシンガーだからポップスの常套手段を使う
フレーズをリピートさせるかさせないか
リピート部に変化を持たせる
アレンジ......単純な曲構成の中で数々の技法を試した
インパクトのあるサビ出のパターン
強さのある洋楽的なベースライン
フェイドアウトについて
音楽は一人で作り上げるものではない
7 映像を意識した曲作り
背景......インスト曲は同時にボーカル曲としても成立するか?
曲作り......ブロックごとに強調させる面を決めていく
言葉数、つまり音符の数が多過ぎるとインストとして成立しにくい
Aブロックではインスト的性格を有線させた
落差の激しい導入部とサビをスムーズにつなげるテクニック
ボーカルバージョンとインストバージョンの違いについて
ポイント......人間の感情の表現方法は1種類だけではない
8 アーティストをプロデュースする
なぜ作曲家がプロデューサーとして成功しているのだろう
新しい時代のアイドルとして菊池桃子をプロデュース
アーティストを通してメッセージを発信する
9 コンピューターを使った曲作り
全く素の状態で、コンピューターに向かって作曲をする
ブラッシュアップをしていく
コードを変更してみる
テンポを変えてみる
リズムを入れてみよう
自分の殻を破るためのコンピューター
第7章 出来上がった曲に満足できないときの対処法
1 曲の善し悪しを見極める
本人が満足できなければ「いい曲」ではない
録音して聴き直す、譜面に書き起こす
曲の光っている部分を見つけ出そう
2 モチーフのつなぎがギクシャクする
まずは欠点を見つけ出すこと
①作った時期のタイムララグ
②コンセプトのズレ
③大楽節のサイズのアンバランス
④大楽節の持つビート感の違い
⑤勢いで一気に完成させた曲も要注意
自分が一番訴えたかったことを思い出す
譜面を書いてチェックしてみる
各ブロックの色彩が違っていても、バランスのいい曲は書ける
3 モチーフ同士のつながりがスムーズ過ぎる
ノーマルに作ればノーマル過ぎる仕上がりになることが多い
平凡なメロディを手直しする方法
1つのブロックを取り出して変えてみる
気に入ったブロックだけ残し、他にさまざまなメロディをぶつける
他人と共作して、違う個性を融合させる
4 サビがイマイチ盛り上がらない
サビ=高い音域のメロディ?
過去のヒット曲のサビをサンプルする
メロディと歌詞を一体化させることが最強のサビを作るコツ
英語のイントネーションに合わせたメロディ作り
「わかりやすさ」と「心地よい裏切り」が同居した作品はヒットする
面白い語感を持ったキャッチコピーに勝手にメロディを付けてみる
インスパイアされるとはどういうこと?
オリジナリティとは?
5 アップテンポの曲なのにスピード感がない
原因その① メロディが大き過ぎる
原因その② 符割がまとも過ぎる
原因その③ コードの展開がまとも過ぎる
6 歌い手の音域に合わせると、音幅が狭過ぎる
ベストな方法は転調
自分の最高音をサビにとっておくことがルール
インストゥルメンタルも作曲の1つの可能性
7 「転調」をうまく使ってみる
転調は今やポピュラーなテクニック
メジャー/マイナー間の転調
部分転調
必ずしも元のキーに戻る必要はない
必然性のある転調と、意図的な転調
どこで転調するか
転調によって歌いにくくなってはいけない
8 ここに気をつければ、もっといい曲になる!
自分なりの方法で1曲でも多くの曲を研究してほしい
中級者へ......異分子を積極的にとり入れてみよう
聴かず嫌いは自分の可能性を狭めてしまう
上級者へ......自分のスタイルを壊してほしい
コラム
1 作曲を楽しもう!
2 掟破りの斬新さ
3 なぜシティポップブームは起きた?
4 四和⾳とテンションコードの話
5 ディスコから学んだこと
6 メロディとアレンジ