内容
手塚漫画の“生”と“性”―――。その神秘と謎に迫る壮大な叙事詩が、
雑誌連載当時のオリジナルの構成で初単行本化。
「週刊少年キング」誌に1970年4月から11月まで計31回にわたって連載された長編漫画『アポロの歌』。同作は、「愛」「性」「命」という手塚治虫の主要なテーマが追究された傑作として知られている。しかし、単行本化に当たってはコマ割りやセリフなどが変更され、改変箇所は100ページにも及ぶ。さらに、単行本に収録されなかった扉絵やページも含めると、改変は実に150ページ以上を数える。そこで本書では、現存する原画を使用し、カラーページもそのまま再現、改編によって失われた箇所は掲載誌面と合成することで、オリジナル原画のコマ割りと構成を復元し、セリフも可能な限り連載時に近づけた。また、巻末に予告カットや単行本の表紙、改題を掲載することで資料性も充実させ、オリジナル版であり完全版という構成を目指した。
本作の主人公、近石昭吾は、複雑な家庭環境で育ったため、「愛」という感情に対して疑念を持つ少年。そんな彼が、医師により電撃療法を施されたことで、時空を超えたさまざまな"愛"を学ぶことになる。しかし愛が成就しかけた途端、現実に引き戻され、そのたびに無限ループを余儀なくされる。そんな体験を繰り返す主人公の戸惑いと葛藤を通して描かれる、命の尊厳と儚さ。これは、手塚治虫による壮大な「愛の讃歌」と言えるだろう! ぜひ、その素晴らしさをオリジナルの姿を堪能していただきたい。