内容
『文豪ストレイドッグス』の原作者・朝霧カフカ監修!
漱石、鏡花や中也など、文豪30名にまつわるさまざまな聖地をエピソード込みで紹介!
本書のカバーを飾るのは、中原中也と小林秀雄の鎌倉・妙本寺での「仲直りの図」。ときは中也の没年である1937年、海棠の花が散る美しい季節のことでした。
文豪には、その生涯を彩るエピソードとセットになった、土地の記憶が数多く残っています。
例えば......夏の夜、京都の街路をそぞろ歩くまだ学生服姿の夏目漱石と正岡子規。師・尾崎紅葉への軽口を許せず、自宅で徳田秋声に殴りかかった泉鏡花。銀座のバーで坂口安吾にケンカをふっかける中原中也。自宅の土蔵でロウソクを1本立てて創作に励んだという江戸川乱歩、川端康成の自宅庭先で歓談する、伊藤整と三島由紀夫、などなど。こうした逸話の舞台のなかには、私たちが訪れることができる文豪たちのゆかりの地がたくさん残されています。
本書ではそんな文豪30名の聖地エピソードを、特に交流の深かったグループごとに紹介しています。お互いの関係がよりはっきりわかるよう相関図も掲載。第五章は、「畸人作家列伝」としてここまでのグループに入りきらなかった個性的なエピソードを持つ文豪たちの豪快なエピソードをまとめています。
生身の人間でもあった文豪たちが実際の土地に残していった痕跡を愛で、往時に思いをはせていただけたら幸いです。
イラストレーション:鈴木次郎
【CONTENTS】
目次
監修者のことば 朝霧カフカインタビュー
文豪聖地マップ
第一章 泉鏡花がみた「紅露時代」の文豪
泉鏡花 金沢で怪異に親しみ、神楽坂で開花した文才
尾崎紅葉 港区を愛した「職人気質」の芸術家
幸田露伴 青森から郡山まで、命からがら歩く中で見つけた筆名
田山花袋 引っ越しすら炎上してしまった不幸な「こじらせ」男
国木田独歩 武蔵野の自然に癒やされた薄幸の人
第二章 夏目漱石とその遺伝子
夏目漱石 熊本、東京、京都に残された足跡
正岡子規 松山と東京をつないだ創作へのエネルギー
志賀直哉 日本中を移り住んだ作家が選んだ我孫子の地
芥川龍之介 日曜日は「我鬼窟」の日
室生犀星 「田端文士村」から「馬込文士村」へ
萩原朔太郎 乱歩とメリーゴーランドに興じた日
菊池寛 「新感覚派」は、湯島のすき焼き店で準備された?
第三章 川端康成と世代を超えた友
川端康成 鎌倉から日本の美しさを歌った寡黙な趣味人
横光利一 下北沢にいまも響く靴音
梶井基次郎 病弱ながら野放図に駆け抜けた31年の生涯
三島由紀夫 神保町で出会ったイデオロギーを超えた友
小林秀雄 「近代批評の父」は酔って水道橋駅ホームから転落
第四章 中原中也と「無頼」の文豪
中原中也 京都での出会い、鎌倉での別れ
太宰治 三鷹に眠る無頼の魂
井伏鱒二 後輩思いで知られる阿佐ヶ谷文士村のボス
坂口安吾 無頼派で一番長生きした「ファルス」の作家
織田作之助 文壇バー「ルパン」での一夜
第五章 畸人作家列伝
江戸川乱歩 土蔵で執筆という伝説を生むほどの「人嫌い」
森鴎外 サロンとして機能した「観潮楼」での歌会
石川啄木 生活に追われて各地を転々とした「空想家」
谷崎潤一郎 最後の妻と暮らし、「細雪」を生んだ神戸の倚松庵
宮沢賢治 生涯を理想郷で暮らした「不遇」な農民作家
小林多喜二 「蟹工船」のイメージの源泉となった小樽の港
中島敦 横浜高等女学校の教卓に置かれた一輪挿しのバラ