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2017.08.10

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE YOUR LOVE』インタビュー|サウンド&レコーディング・マガジン2017年9月号より

Text by Tsuji. Taichi Photo by Chika Suzuki(Studio、Equipment、Guitars)

 KUMI(vo、g)とNAOKI(g)から成るLOVE PSYCHEDELICO。2013年の『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』から約4年ぶりに発売された7枚目のオリジナル・アルバム『LOVE YOUR LOVE』では、レコーディングだけでなくミックスの大半までを自分たちで手掛け、新たな境地にたどり着いた。AVID Pro Toolsシステムを中心に据えたプライベート・スペース=Golden Grapefruit Recording Studioを訪れ、本作のプロダクションについてNAOKIから話を聞いた。

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE YOUR LOVE』インタビュー

アウトボードに求めているのはある種の"生演奏"のような感じ

ー近年はビンテージのアウトボードやマイクなどを多数導入し、アルバムの制作にも活用したと聞きました。

NAOKI 最近は"リコールできること"が重視されているというか、そういうリクエストがエンジニアの方に多いんでしょうね。DAW完結のミックスもアリだと思うんですが、その一方で僕らは実機を楽しんでいるところがあって。例えばミックスの際は、アウトボードをなるべくリアルタイムに使うようにしているんです。リターンの音をPro Toolsのトラックに録ってからミックスするのではなく、鳴らしながら2ミックスを作っているんですね。同じアウトボードを使ったとしても、リターンを録った音と、インサート・ポイントからリアルタイムに返ってくる音が同じとは限らない......むしろいったん録音することで、変わってしまうと思うんです。だから僕らは可能な限りリアルタイムな方を採っているし、簡単にはリコールできないんですよ。

ーアウトボードに送った音が返ってくるまでに生じる遅延は気にならないのですか?

NAOKI D/AとA/Dに使っているPRISM SOUND ADA-8XRが非常にローレイテンシーなんです。アウトボードへ出すときに約35サンプル、戻ってくるときにも35サンプルほどにとどめられるので、計70サンプルくらいしか生じない。許容範囲だとは思っていますが、リターンをいったん録音する場合やリアルタイムでも神経質になるべきパートは、遅延を補正することもあります。特に主要なパート......例えばKUMIのボーカルなどは、必ずリアルタイムに処理するようにしているんです。コンプレッションにはUREI 1176LN Rev. Fをよく使っていますが、大事なのは"1176 のアウトプットが鳴らしている音をそのまま残せる"という点。つまり機材の特性で"演奏"されている音をそのままミックスに反映できるわけです。これだけで立体感が違ってくるし、機材にもある種の"生演奏"を求めているんですね。

ーリアルタイムに電気信号が生成されているというのは、まさに生演奏のようですね。

NAOKI そうそう。一例として録音時の話をすると、ギター録りのプリアンプにはNEVE 1073をよく使うんです。で、録っている最中はMARINAIRトランスのサウンドを聴いたりしてドキドキするわけなんですが、データになると何かが変わるような気がしていて。さすがにレコーディングではいったん録るしかないものの、リアルタイムに鳴らしている音と録った後の音では"ドキドキ感"が違う。ミックス時も、機材のアウトプットの特性を生かせるところには生かしたいんです。また機材の個体差などにも喜んで、楽しんで接しています。例えばAPI 550Aは、フィルターのカーブひとつを取っても差があるんです。

ーまるで個性的なプレイヤーのようですね。

NAOKI そうなんです。550AはノーEQの状態で使っても、通すだけで音が変わります。またハイやローを極端にブースト......例えば12dB上げたって、なかなかいいサウンドに聴こえる。でもこれは、見方を変えてみると正確に効いていない可能性がありますよね。本当にちゃんと12dB上がっているのか?という。だから厳密に12dBブーストしたい場面では使わないし、目的によってはプラグインを選んだ方がいいこともある。そうやって僕らは実機とプラグインを使い分けていますね。

(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2017年9月号にて!)


品種雑誌
仕様B5変形判 / 252ページ
発売日2017.07.25