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【プライベート・スタジオ】中野雅之(BOOM BOOM SATELLITES)|サウンド&レコーディング・マガジン2018年1月号より
Text by Susumu Kunisaki, Photo by Hiroki Obara
本来の意味で音楽に集中するため
理想の音響を極限まで追い求めたスペース
2016年10月に川島道行が逝去したことで、20年におよぶ活動に終止符を打ったブンブンサテライツ。残された中野雅之は、その軌跡を4枚のCDにまとめ、自らマスタリングを施したベスト盤『19972016』としてリリースしたが、その際に本誌が行ったインタビュー(2017年4月号)の中で、自身の音楽活動をリスタートするために新たなプライベート・スタジオを建設中であると明かしてくれた。そこはこれまでのようなマンションの居室をそのまま使った作業スペースではなく、防音と遮音を完ぺきに施した、正確なモニターができる部屋になる予定であるとも。2017年の秋、中野から「やっとお見せできるような形になりました」との連絡を受け、編集部は都心のマンション内に作られた新プライベート・スタジオに足を踏み入れることができた。"TANGERINE HOUSE"と名付けられたそのスペースは、オーディオを緻密(ちみつ)に扱いたいという中野の理想をかなえるべく、部屋の音響を極限まで追求した、まさに音楽を仕上げるための場であった。
ディフューザーを設置することで
小ぶりながらもライブな響きのある空間
「自分たちのバンドが終了して、今後はさまざまなアーティストやプロダクションとかかわっていく機会が圧倒的に増えるだろうと考えました。その場合、アトリエ的な作業場では済まされないので、音の正確な判断ができ、なおかつ24時間稼働できる場所を作ろうと思ったんです」
新スタジオ設立の理由についてこう話す中野。物件選びの段階からアコースティックエンジニアリングの入交研一郎氏に加わってもらい、設計から施工そして最終調整までタッグを組んで行ったという。
「鉄筋コンクリート造の物件をスケルトンにして、浮き床を作った上で、部屋の縦横比から壁の素材から、もう音響のことだけを徹底的に考えて作っていきました。もともとは12畳くらいの部屋なんですけど、40〜50cmの防音層と吸音層を作っていますので、実質的には10畳くらいの広さですかね。ワンマン・オペレーションを想定したので、各機材に手が届くくらいの大きさにしたかったんです」
確かに小ぶりなスペースだが開放感もある。それはデッド過ぎない部屋を目指したからだと続ける。
「ある程度のライブ感が欲しかったんです。小ぶりな部屋をバランス良くライブにするのは難しいんですが、ディフューザーを設置したり、壁のクロスの裏もグラスウール面とディフューザー面とさまざまな素材を組み合わせています。それでも最初はデッドになっていたので、スピーカーの左右にディフューザーを増設するなどして整えていきました」
(続きはサウンド&レコーディング・マガジン2018年1月号にて!)
サウンド&レコーディング・マガジン 2018年1月号
品種 | 雑誌 |
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仕様 | B5変形判 / 308ページ |
発売日 | 2017.11.25 |