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2018.04.12

原田真二インタビュー/デビューの頃の思い出|『A面に恋をして』より

text by 谷口由記

シングルの表題曲が"A面"と呼ばれた時代に生まれた名曲について、歌い手自らが振り返る書籍『A面に恋をして 名曲誕生ストーリー』から、貴重な証言の数々を抜粋してお届けするインタビュー。第9弾は、原田真二が語る「キャンディ」。

原田真二「キャンディ」

「自分が何者か」をわかってもらうのに必死だった

―「キャンディ」は、定型フォーマットとは違う歌のような気がします。一般的な邦楽はBメロがサビ前を盛り上げるように作られているものですが、そうはなっていない。原田さんが洋楽志向だったから、こうなったのでしょうか?

 それしかないと思いますね。ピンとくるものは、ジャンルを問わずに聴いていましたからね。とくに洋楽のロックが好きで、ほかにもジョン・ウィリアムズ、ヘンリー・マンシーニとか映画音楽のオーケストラなんかも好きで。そういう曲の譜面を探して、どういうアレンジをしているのか確認したりして。あとはスティーヴィー・ワンダーとかソウル系も好きだったし、ジャンル関係なく聴いていましたね。

―18歳のときには、自分で表現されていた。

 いえ、中1からやっています。ギターを始めて、エルヴィス・プレスリーのステージでファンが熱狂しているのをテレビで観て、「この世界しかない」と思ったんです。だから、中1、中2の時点で、もうプロを目指しているんです。それからは、「面白いな」と思った曲はレコードを買って、ものすごく貪欲に聴いていましたね。お小遣いは全部レコードにあてていましたよ。

―曲やサウンドの作り方はどうやって学んだのですか?

 中学のときは、ギターのユニットしかやっていなかったんですが、バンドのサウンドをいつも想像していたんですね。で、それを試すようになったのが、高校に入学して軽音楽部に入ってから。クラスメイトとか友達になったばかりのやつを5人くらい口説いて、バンドの形にしていろんなことを試していくんです。ドラマーに、「ちょっと、こんなふうにやってみてよ」って言うためには、自分がドラムを叩いて説明するしかないじゃないですか。そうしているうちにいろんな楽器ができるようになりました。そうやって実際に音を出して、アレンジというものを知っていくんです。
 あとはジャズのビッグバンドにも高校1年から参加して。譜面の勉強になりましたね。本当に音楽漬けの毎日でした。

―いろんな音楽を吸収しながらアウトプットを試して、ということを、高校生の時点でやっていたんですね。

 そうです。それが高校1年、2年くらいのときですよ。2年生のときには、もうデビューをどうするかというのを考えていました。そのころは、歌謡曲の世界でも若くしてデビューしている人が多かったから、とにかく早く、自分もそのレールに乗りたいという気持ちが強かったんですね。

―自分の曲に自信があったんですね。

 いえ、自信はまったくないです(笑)。ただ、ネガティブな考え方をしないというだけなんですね。「絶対にこうなれる」という信念だけです。

―そして、フォーライフの新人オーディションにデモ・テープを送るんですね。

 世に出ているほかの曲とはまるで違うものだろうという自負はありました。そのころは歌謡曲ばかりだったので、洋楽のような世界観の曲が日本に入ってきたらどうなるんだろうという思いがありました。
 で、テープを送って3日後くらいには連絡があったんです。ディレクターが広島まで会いに来てくれて、「おっしゃ! やったぞ!」って。翌年の高3の夏休みを利用して、東京のレコーディング・スタジオで何曲か録りました。そのレコーディングの模様を、フォーライフを設立した4人(小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる)が見ているわけです。緊張でやりにくいったらないですよね(笑)。

―立て続けにヒットが生まれ、社会的なブームになりました。自分の思い描いていたレールが急に目の前に現われて、そこに乗ったわけですよね。

 いきなり世界が変わりました。生活のすべてが。

―過去のインタビューで、18歳、19歳のころは、ものすごく生意気だったというお話をされていましたが、思い返して「わがままを言ったなぁ」ということはありますか?

 テレビの現場でのコミュニケーションは、間違いなく生意気だったでしょうね(笑)。日曜のお昼にやっていた『TVジョッキー』という番組で、新人の女の子2人と僕が一緒に紹介される場面があって、その女の子たちは明るい調子で「よろしくお願いしまーす」なんて言っているんですけど、僕は内心「一緒にされるのは嫌だな」と思って、「アーティストの原田真二です」って言ったんです。これに番組プロデューサーが激怒して、司会の土居(まさる)さんのところにお詫びに行かされましたよ。

―お詫びに?

 生意気だから(笑)。いまや猫も杓子もアーティストですけど、当時は新人がそんなことを言うのはありえないですから、生意気に映ったのは間違いないですよ。でも、土居さんは「がんばってくださいね」と言ってくれたし、きっとまわりが気を遣っていただけなんでしょうね。

―そういうアピールをしないと、アイドルに見られる部分があった。

 そこなんですよ。「自分が何者か」というのをわかってほしいから、こっちも必死で。自分がしゃべるときは、とにかくそれをアピールする。あとは音楽を聴いてもらうしかないんですけど。

――でも、「キャンディ」という曲自体が、アイドル的な見方を後押しするような側面も持っていたと思うんです。

 おっしゃるとおりです。だから、この歌詞がきたときに、「えーっ」と思ったんです。

(続きは書籍『A面に恋をして』にて!)

はらだ・しんじ●1958年広島県生まれ。1977年、「てぃーんず ぶるーす」でデビュー。1stアルバム『Feel Happy』はオリコン初登場1位を獲得するという日本音楽史上初の快挙を成し遂げる。音楽を通じ、周りを思いやる優しさ「大和」の心を、世界中に届ける活動を展開している。デビュー40周年を記念した全曲新録音のベスト・アルバム『PRESENCE』が発売中。 http://www.shinji-harada.com/


A面に恋をして 名曲誕生ストーリー

品種書籍
仕様四六判 / 192ページ
発売日2018.03.16