(株)トライバルメディアハウス コミュニケーションプランナー/プランニングリーダー
『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』は、実際に音楽の世界で活躍している実業者4名による共著。中でも、議論の土台となるソーシャルメディアについての部分を執筆されたのが、高野修平氏だ。ブロガーとしても知られる氏に、話を聞いた。
※このインタビューは2012年12月に行われました。
●高野さんは現在、ソーシャルメディアマーケティング支援会社であるトライバルメディアハウスでコミュニケーションプランナー/プランニングリーダーとしてご活躍中ですが、具体的にはどういったお仕事なのか、他の業種の人や学生にも分かるようご説明いただけますか?
○ソーシャルメディアを活用した、マーケティングやプロモーション中心のプランナーの仕事をしています。音楽業界に限らず、他業種のお客様と一緒にコミュニケーションデザインを考えたり、ディレクションを行なったりしています。
●高野さんは以前から大変な音楽ファンで、音楽業界との仕事も多くなさっているそうですね。また2011年5月からは、音楽とソーシャルメディアを主なテーマとしたブログ「a day on the planet」を開始しています。このブログを始めた動機について教えてください。
○トライバルメディアハウスでは国内でのソーシャルメディアマーケティングにおいて、社内には僕が入社する前から社長含め、ソーシャルメディアやマーケティングなどの分野に関するアルファブロガーが多数いました。
トライバルメディアハウスに移籍するにあたって新しいブログのテーマを考えたときに、いまさらソーシャルメディアマーケティングについて書いてもしょうがないと思ったんです。なぜなら、もうそこはレッドオーシャンだったので。そこで、僕自身が音楽を大好きだったことと、ソーシャルメディアと音楽を融合したブログや書籍が世の中にはほとんど無かったということで、その方向でブログを書き始めました。
●2012年の10月には初の著書『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネスマーケティング新時代-』、11月には『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』が出版されました。これらについても、執筆の動機またはきっかけなどをお話しいただけますか?
○ブログを通じて、いろいろな方と出会うことができたんです。そのような流れの中で、『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネスマーケティング新時代-』に関しては、旧ソニー・マガジンズの社長で今はエムオン・エンタテインメント取締役の村田茂さんにお会いする機会がありまして、ソーシャルメディアと音楽をテーマにした書籍を書きたいという話をしましたら「うちから出版してみないか?」と言っていただき、出版する運びとなりました。
『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』は、執筆前からつながっていた方々が書かれるということで、「僕も参加できたらいいなあ」くらいの感じで思っていたら、あっという間にご縁があって決まったという感じです。
●ブログ、著書、講演等のすべてにおいて、高野さんは【共有】・【共感】・【共鳴】という3つのキーワードを中心にして論考を展開なさっています。これらのキーワードが生まれた経緯について、簡単に触れていただけますか。
○ソーシャルメディアマーケティングが盛り上がりはじめたときに、【共感】というワードがすごくポイントだと言われていました。確かに、そうだよな、と。でも、それを、音楽に結びつけて考えたときに、【共感】だけでは音楽に関してはちょっと足りないんじゃないかと考えていました。そのままトレースはできない。その先があるはずだと。それで、ブログを書きながら出てきた概念が【共鳴】でした。しかも、【共鳴】の熱量が瞬間的にあるだけではダメで、それを循環させていかなければ結果にはつながらないということで、【共有】・【共感】・【共鳴】を“サイクル”させるという構想に至りました。これは、ソーシャルメディア時代だからこそ可能になる概念だと思います。
●最近の音楽業界では、アーティストやイベントのプロモーションにソーシャルメディアを取り入れているケースがよく見られるようになりました。その中でも、高野さんの目から見て成功例、または今後に期待できる例と思われるものはありますか?
○これは、何をもって成功と呼ぶかによって変わります。“いいね!”数がいけば良いというものではないし、フォロワーが増えれば良いというものでもない。今は、ほとんどが戦略なしの戦術に陥っているように思えます。それでは効果も測れませんから、意味がありません。
また、ソーシャルメディアが一般化してきたことによる“勘違い”も多々起きています。「バズを起こしたい!」等の相談をいただくことも多いのですが、そもそもバズが起きる仕組みや理解が無い上で安直に考えている場合が多いのです(バズはそう簡単には起きません)。
ですので、まずは戦略を立てることから始めることです。 それが見えれば、何をもって成功と言うかは見えてきます。ですので、まず成功の定義を決めずに成功の事例を求めること、そして音楽業界の中で求めてしまうことが問題です。他業種から学ぶ方が、きっとヒントは多いと思います。
●では、アマチュアでマーケティング用語も知らない高校生バンドから「ソーシャルメディアで自分たちの音楽を広めたい」という相談を受けたとしたら、どのようなアドバイスを返すでしょうか?
○まずは、自身のソーシャルメディアリテラシーを聞きます。その上で、戦術の前に一緒に戦略を考えますね。市場、ターゲット、ロードマップなど戦略策定を行なった上で、戦術をプランニングします。“とりあえずfacebookページ”となってしまわないように、そこを徹底的に掘り下げていきたいですね。
●今、CDが以前ほどには売れなくなって音楽業界は苦戦を強いられていますが、高野さんの論考には常に、“音楽が好きな人たちが互いに知恵を出し合えば必ず新局面が開ける”といった力強い主張が底流にあります。この明るさが、人を魅了するのではないでしょうか。
○悲観するって簡単だと思うんです。卑下することも。でも、音楽はこれからも消えないし、音楽はずっと聴かれ続けると思います。ただし、時代の流れには即していないし、ユーザーファーストを忘れているように思います。その前提を踏まえた上で、ソーシャルメディアに限らず音楽を広く届け聴いてもらえる方法は、絶対にあると思っています。僕はそこで、マーケティングやソーシャルメディアの立場から恩返しがしたいです。ずっと音楽に救われてきましたから。
●今回のインタビューのテーマは“今、音楽で稼ぐ方法”です。高野さんが今、最も有望視している“稼ぐ方法”がありましたら、最後に教えてください。
○インディーズであれば、100人のコアファンを作ることです。もちろん、ベースにはしっかりとした演奏力や技術が伴います。そして、稼ぐならリアル、デジタル含め総合的にプランニングすることです。その中で、まずは100人のコアファンを作り出すこと。そのファンとつながれる仕組みを持つこと。そのファンが他の子を引き連れてくれるような土壌を用意しておくこと。既成概念を疑うこと。そこから突破口は見えると思います。
●どうもありがとうございました。
このインタビューの内容に興味を持った方は、高野修平、山口哲一、松本拓也、殿木達郎の4氏による共著『ソーシャル時代に音楽を"売る"7つの戦略』もぜひご覧ください。
また同書の著者たちは、Facebookとメールマガジンでも情報を配信中です。
さらにRandoMでは、松本拓也氏による記事「音楽におけるインフルエンサー起用モデルはどこへ向かうのか?」もお読みいただけます。
高野修平 プロフィール
1983年東京都生まれ。ソーシャルメディアマーケティング支援会社トライバルメディアハウスにてコミュニケーションプランナー/プランニングリーダーとして所属。音楽・エンタメ業界では企業やアーティストのソーシャルメディア、デジタルを活用したコミュニケーションプランニング、コンサルタント、講演、執筆などをおこなっている。音楽業界に関わらずソーシャルメディアマーケティングを支援している。ソーシャルメディアと音楽ビジネスをテーマにした内容で、2012年9月初の単著『音楽の明日を鳴らす-ソーシャルメディアが灯す音楽ビジネスマーケティング新時代-』(エムオン・エンタテイメント)を刊行。ソーシャルメディアと音楽ビジネスのブログ「a day on the planet」を更新中。
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